牛肉も豚肉も鶏肉も、長い年月をかけて、人間が品種改良してきた。
昔々は、野生の牛や豚や鶏を獲って食していたが、必ずしも味はよくなかった。
だから、食べておいしく、人間の体の滋養となるように、餌を工夫し、育ててきた。
海産物でも、われわれが日常食べている牡蠣は養殖ものの牡蠣である。人が安心して食べられるように、そして大量生産できるように品種改良を重ねてきたのだ。
日本は海に囲まれ、山が多い国である。
古来、海の幸・山の幸に恵まれ、それを食して生きてきた。
だが今日では、環境破壊や海洋汚染が進んで、「天然もの、必ずしも安全ならず」という時代になってしまった。
食の安全の観点から養殖の重要性がクローズアップされるゆえんだ。
人間は水中生活できないことから、魚の養殖化が一番遅れたが、ハマチの養殖は今日では誰もが知っているし、トラフグも養殖が多いことはよく知られている。
近畿大学水産研究所長の熊井英水教授によると、「ハマチの七十二〜七十三%は養殖。トラフグの五十%は養殖」とのことである。
おめでたい席に欠かせない「鯛」が安く買えるようになったのも、養殖に成功し、大量に出回るようになったからだ。
最近では、無毒で食べられるトラフグの養殖にも成功している。
日本人が一番好きな魚はマグロだ。日本は世界最大のマグロ消費国で、総漁獲量の約四分の一を食べている。赤身もおいしいが、中トロや大トロの味は格別だ。
これまではそうであった。だが、これからは、今までのようにはいかなくなる。BSE(牛海綿状脳症)や鳥インフルエンザの影響で、それまでマグロを食べることが少なかった民族がマグロを食べ始めるなどし、世界規模で乱獲が進んだために、日本に割り当てられる年間の漁獲量が激減することになったのである。さあ、どうする!?
昔は、安くて食べ放題だった「数の子」も、ニシンが獲れなくなって高級食品と化した。マグロもそうなってしまうのだろうか!?
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