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「花も綺麗な野菜たち」


 この連載の第1回「楽しく植物を育てる、そして食べる」で野菜を育てる楽しみは「花より団子」と書きました。確かに野菜の主役は花ではなくその実であることは間違いありません。けれど、野菜の花は案外、といっては花に失礼ですが、とても綺麗です。どれもみな、鑑賞用に栽培されている花とは違った、個性豊かな表情をしています。

 わたしたち、農家も最近では、種は種苗メーカーから買ってしまい、自家採取することも少ないので、花を見る機会も全体的に少なくなっています。ついつい花があるから実があるというあたりまえなことを見過ごしてしまっています。

 さていくつかの野菜、根菜を取り上げてみましょう。

 まず花と実のコントラストがはっきりしているのが、ジャガイモです。

 ごつごつしたいかつい男性の顔をジャガイモに例えますが、その花は白もしくは薄紫で、大きさ形、ともに可憐で、そのギャップに驚かされます。

 同じようにダイコンの白い花も「ダイコン足」のマイナスイメージとのギャップが大きいものの一つです。

 強烈な匂いのニラ、ニンニクの花もギャップの大きい部類に入るでしょう。特にニラは線香花火を連想させるような繊細な白い花を咲かせます。

 個人的に気に入っている花は「オクラ」。

 オクラの原産はアフリカでアオイ科に属し、芙蓉、むくげなどと同じ仲間です。したがってオクラの花はむくげによく似ています。オクラの実の、あの形、あのネバネバした食感からは連想できないくらい、さらりとした爽やかさを感じさせます。

 オクラは栽培も楽で、食材としても栄養価が高く、「野菜のホームラン王」と絶賛したくなるほどです。「ベランダ農業」一押しの野菜です。

 これまでの逆で、花の色が実の表皮や果肉の色と同じで、連想しやすいのが薄紫色したナスの花、そして黄色い花のかぼちゃです。

 変わったところではネギ。

 ネギは収穫せず、そのまま畑にほったらかしにしておくと葉の先に花が咲きます。その形が丸い玉のようなところから葱坊主と言われています。葱坊主に近づいてよくみてみると、白い綿毛のような花がびっしりと球状に咲いています。

 さて次号(3月12日)をお届けする頃は「啓蟄」といって、春の陽気に誘われた冬虫がもぞもぞと動き出す季節です。そしていよいよ「ベランダ農業」実践編がスターとします。

>> 茂木清一 <<
1948年埼玉県生まれ。埼玉県美里町で農業を営む。元JA技術指導員。
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