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− 第3章:牛メドー −


 大まかな言い方ではあるが、イギリス国土の約3分の1が耕作地で、同じく3分の1で家畜の放牧が行われ、残りの3分の1が森林や住宅地などであるらしい。 イギリスの田舎を旅行をすると、とこまでも続く丘陵地帯に、点々と羊や牛が眺められ、のどかで美しいカントリーサイド風景を満喫できる。 日本のような険しい山岳地帯のないイギリスでは、国土の大部分を、食料生産に使うことができる。 ケンブリッジを訪れる日本人観光客は、伝統的なカレッジ構内の緑地に、牛が放牧されていることに驚く。 そして、街中でも、川に沿ってつづく散歩道や“コモン”と呼ばれる緑地で、牛たちが草を食み、木陰で休んでいたりすることに、さらに驚く。 その上、牛たちの合間を通り抜けなくてはならなかったり、写真を撮ろうとカメラを構えたら、逆に牛たちに興味を持たれ、寄ってこられたりするので、悲鳴をあげる。


 春から秋にかけて、牛たちはメドー(牧草地)に放たれる。 そして、メドーの中には、“パブリック・フットパス”と呼ばれる、公共の遊歩道が横切っている所が多い。もちろん、メドーは私有地であり、牛たちも大事な私有財産である。 イギリスには“カントリー・コード”なるものがあり、一定のルールを守りつつ、耕作地や牛たちや羊たちが放牧されているメドーの中を、自由に歩くことができる。 “パブリック・フットパス”は、イギリス全土を網の目のように走っている。 ケンブリッジの周辺にも、くまなく張り巡らされていて、田園風景を楽しみながら散策することができる。 そして、人々に最も愛されているのが、ケンブリッジ市郊外、グランチェスター・メドーのフットパスである。夏季は、多くの人たちがここで牛たちと一緒に自然に包まれ、寛ぎの一時を過ごす。

>> 志村 博 <<
英国ケンブリッジ在住、アーティスト。
http://www.shimura-hiroshi.com/
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