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 このところ、中国製食品の安全性をめぐる問題が連日、マスコミを賑わせていますが、こうしたニュースとは関係なく生活者の“食へのこだわり”、“安全への関心”も従来とは明らかに違った次元で高まっているようです。

 それは、食育と名のつくシンポジウム、セミナー、講演会などを覗いてみるとよく分かるのですが、中高年のみならず、若い男女の参加が意外なほど多く、どの会場も満員・盛況の状態で熱気に溢れています。こうした動きは何も都会の多人数を対象とした会だけでなく、地方でもあるいは、ごくごく内輪のプライベートに近い集まりにまで根をおろしつつあるようです。

 渋谷で毎月、最終日曜日に開催されている「アースデイ」の青空市場なども、ほとんど産直ともいえる農産物や日用品、小物などを求める老若男女で大賑わい。ここでも若くて熱気ある生産者と生活者が有機や自然をめぐる熱い交流で盛り上がっているようです。


小学三年生、百人によるトウモロコシの収穫授業


 今回は前号で予告した通り、「食育の現場より」というテーマで東京近郊、東久留米市の小学校で行われているユニークな食育教育の一端をレポートします。

 池袋から西武線で約20分、そこから、バスに乗り換えて10分足らずの場所にその小学校と畑があります。7月6日はトウモロコシの収穫日。参加したのは3年生の3クラス、

 ほぼ100名の生徒たちです。クラス毎に担任の先生に引率されて畑に集合、生徒たちは農業塾の先生(野菜の先生と呼ばれています)からトウモロコシの原産地、種の写真解説、葉っぱと実の付き方、収穫の仕方等々についての簡単な説明を受けた後に、いよいよ実際に自分たちの背丈よりも高いトウモロコシ畑に分け入ります。

 農業塾のおじさん先生たちの指示に従って一人、一本のトウモロコシを幹から引き剥がし、またもとの集合場所へと戻ってきます。単純と言えば単純な作業にすぎませんが、実際に畑の土に足を踏み入れ、自分の背よりも高い幹からしっかりと実の入ったトウモロコシを収穫するという体験は、子どもたちにとってはそれなりに得がたい思い出になるでしょう。

 それは現在のわれわれや子どもたちを取り囲む生活環境を考えてみれば、一目瞭然です。ほとんどの生活者がマンションやおまけ程度の庭しかない一戸建てに住み、買い物の大半が町のスーパーかコンビニもしくは量販店。それらを行き交う道もコンクリートと電信柱に画一的な公園ばかり。

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子供たちを前にしてとうもろこしの種の写真を掲げて説明する

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若い先生に引率される3年生の子供たち