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海で生まれ、川で大きくなるウナギ


 ウナギはサケなどとは逆に、海で産卵して川で大きくなります。2005年の調査で、ウナギはグアム島やサイパン島が属すマリアナ諸島の北西約300qの海域で、5〜6月の新月に産卵することがようやく判明しました。それまでは、ウナギの産卵についてはまったくの謎でした。古代ギリシアのアリストテレスは『動物誌』で、白子や卵巣を持ったウナギが発見されていないことから、ウナギはミミズから生まれ、ミミズは土から自然発生するという珍説を唱えています。ウナギに卵巣が見つかったのは1780年ごろですから、古人がウナギの誕生を理解できなかったのもうなずけます。ウナギの孵化直後の仔魚をプレレプトケファルスと呼び、30日後には柳葉型の幼生レプトケファルスとなります。この幼生は海面を漂いながら、西へ流れる北赤道海流によってフィリピン近海まで運ばれ、さらに北上する黒潮に乗って日本近海にたどり着きます。約700kmにもおよぶ旅程のすえ日本近海に着いたレプトケファルスは、半透明なウナギの稚魚シラスウナギに変態し、群れをなして川を遡上していきます。ウナギは皮膚呼吸することができるので、流れの激しい滝なども岩場や川岸に上陸して這っていきます。そのような生態から派生した言葉が、物価や温度が勢いよく上昇することのたとえ「ウナギのぼり」です。ウナギは夜行性で、昼間は岩陰や泥のなかに潜んで、夜間に小魚・昆虫・ドジョウ・貝類・エビ・カニなどのエサを求めて活動します。ウナギはカワエビやサワガニを食べながら2年間かけて川を源流まで遡上し、3年目から8年間かけて海に帰りはじめます。この海に帰る時期のウナギは栄養をつけるために悪食になるので、一気に風味が落ちます。この悪食期間の滋味に乏しいウナギのことを「ウドの大木」にちなんで「ボク」と呼んでいます。その一方で、産卵に備えて栄養を十二分に蓄えて豊満になっているため、人によっては美味であるともいいます。

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