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お酢は最古の調味料


 酢は、アルコールが酢酸菌によって発酵してできた調味料です。そのため、酢の起源には諸説ありますが、酒やワインなどが自然発酵してできたと考えるのが一般的です。酢は人間が手を加えてつくった最古の調味料といわれているように、人類の祖先が果物などを蓄えることを覚えた際に、それが自然にアルコール発酵して酒が生まれ、そこへさらに菌が働いて酢が誕生したと考えられています。英語で酢を意味する「vinegar(ビネガー)」が、フランス語の「vin(ワイン)」と「aigre(すっぱい)」が合体してできた「vinaigre(ビネーグル)」に由来していることからも、「酢は酒がすっぱくなったもの」という認識がわかります。ちなみに漢字の「酢」という字には、酒が日を重ねてできたものという意味があり、語源については洋の東西を問わないようです。

 酢の起源は古く、紀元前5000年ごろの古代バビロニアでは、干しぶどうやナツメヤシを利用して酢をつくっていたといわれています。文字による初出は『旧約聖書』で、紀元前1250年ごろに酢は飲み物として登場しています。古代の人びとも酢が体に良いことに気づいていたようで、古代ギリシアの医学者ヒポクラテスは病み上がりの病人に酢を摂るようにすすめ、古代エジプトのクレオパトラは美容のために真珠を酢に溶かして飲み、中国でも周の時代には漢方薬としてその効能が認められていたそうです。医薬品以外の効能も古代ギリシアの歴史家ヘロドトスなどによって研究され、紀元前218年の戦争では、硬い岩山を要塞としていたローマ軍に対して、カルタゴの将軍ハンニバルは酢を使って岩を溶かすことで勝利したといわれています。

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