素材

  • 前のページへ
  • 006
  • 次のページへ

主原料の大豆はほとんどが輸入品


 味噌の主原料は大豆で、黄色種がもっとも多く使用されています。国産大豆の使用率は3%前後で、ほとんどは輸入物です。蒸すか煮た大豆を潰し、麹と塩を加えて半年から1年ほど熟成させることによって、たんぱく質が消化しやすく分解され、旨みのもとであるアミノ酸が多量に遊離した味噌ができあがります。麹は米・麦・豆などさまざまで、その使用によって味噌の種類が分類されます。東日本全域と近畿・北陸地方で愛用されるのが「米味噌」で、色によって黄色・淡色(白色)・赤色に分けられます。煮大豆を使用する淡色の米味噌は通称「白味噌」と呼ばれ、あっさりとした口当たりで甘みが強いのが特長で、西京味噌や信州味噌などが代表例です。一方、蒸し大豆を使用する赤い米味噌は、コクがあって辛みが強いのが特長で、仙台味噌や津軽味噌などが代表例です。また米味噌は、米麹が多く使用される味噌ほど熟成期間が短い傾向があるようです。中国・四国・九州地方で愛用されるのが「麦味噌」で、薩摩味噌や島原味噌などが代表例です。また麦味噌は、発酵が進むと色が黒くて辛くなるため「田舎味噌」という別称があります。中京圏で愛用される「豆味噌」は通称「赤味噌」と呼ばれ、やや黒みを帯びた赤褐色と渋み・旨みが濃厚な風味が特長で、八丁味噌が代表例です。現在、味噌の生産量が多い県は、青森・新潟・長野・愛知などで、とくに長野県は総生産量の4割近くを生産しており、味噌の一大産地であることがわかります。西日本では、広島・徳島・福岡・大分などが比較的生産の多い県となっています。なお、国民一人当たりの味噌の年間購入量は2,436gで、味噌汁一杯の分量約15gに換算すると、日本人は1年間に一人当たり約163杯の味噌汁を飲んでいることになります。


味噌が日本の食生活を確立した


 江戸時代の人見必大が著した本草書『本朝食鑑』(元緑8年・1695年刊)によれば、「味噌はわが国では昔から上下四民とも朝夕に用いた」もので、「1日もなくてはならないもの」であり、「大豆の甘・温は気を穏やかにし、腹中をくつろげて血を生かし、百薬の毒を消す。麹の甘・温は胃のなかに入って、食および滞りをなくし、消化をよくし閉塞を防ぐ。元気をつけて、血のめぐりをよくする効果がある」としています。当時の人びとは、経験則から味噌の効能を認識し、調味料としてだけではなく、保健のための栄養素として、味噌をベースにした日本の食生活を確立していきました。農家では、どんな飢饉のときにも味噌の仕込みだけは欠かさず、たとえ穀類の収穫が減少しても、味噌さえあれば飢えをしのいで健康を守ることができると信じていたようです。一方、現在でも医学的に味噌の代表的な効果を挙げると、がん予防・コレステロールの抑制・消化促進・整腸作用・胃潰瘍の予防・美容効果・脳の活性化・老化防止・基礎代謝の促進など枚挙にいとまがありません。さらに主原料である大豆には良質のたんぱく質が多く含まれ、そのなかには生命維持に不可欠な必須アミノ酸のリジンのほか、過酸化脂質の増加を防ぐといわれているサポニンや、ビタミン群・カリウム・カルシウム・食物繊維などさまざまな栄養素が豊富に含まれています。また、大豆に含まれるフラボノイドの一種である「イソフラボン」は、とくに女性ホルモン(エストロゲン)に働きかけ、骨粗鬆症の予防、美肌・美白の効果、更年期障害の改善効果があるとして近年注目されている成分です。


記事関連の写真
記事関連の写真
記事関連の写真
記事関連の写真
記事関連の写真
記事関連の写真
記事関連の写真