食品表示の落とし穴
消費者の立場からみて食の安全性を判断するものさしは食品表示にあります。それも表示義務者が嘘、偽りなく正しい表示をしていることが大前提です。
しかし残念ながら一部の不心得な人たちによって、嘘の表示が行われ、消費者の信頼を失ってきました。
食品表示の代表には「原産地表示」と「消費・賞味期限」があります。
JAS法では生鮮食品に関して「原産地表示」を販売者に義務づけています。スーパーの生鮮食品コーナーでは輸入品の多さに気づかされます。いうまでもなく食べものには野菜、魚介類のように、なんら加工が加えられていない天然素材としての生鮮食品と天然素材にさまざまな手を加えた加工食品があります。
食品の安全性を脅かすさまざまな問題が噴出しましたが、農林水産省のJAS法と厚生労働省の食品衛生法の期限表示がバラバラでした。
これまでは食品衛生法に規定する「品質保持期限」及びJAS法に規定する「賞味期限」のいずれの用語を用いてもよいこととされていましたが、現在では「賞味期限」と統一記載されるようになっています。
比較的傷みにくい食品等には「賞味期限」を表示し、傷みやすい食品には「消費期限」と使い分けをしています。
安全に対する行政の対応が遅くなるというこれまでの縦割り行政の弊害を教訓として、改善された結果、表示が整理統合されてわかりやすくなりました。
しかし、表示問題にはある大きな落とし穴があります。
落とし穴は加工品の「消費期限」、「賞味期限」の適用対象です。実は期限表示の対象となる加工食品のなかで加工品に分類されない食品があるのです。その食品とは一般消費者には直接販売されず、業者間で取引される業務用の加工食品のうち“塩蔵・塩干・乾燥魚介類、乾燥野菜、乾燥果実等”は品目及び期限表示の省略が可能とされています。
“塩蔵・塩干・乾燥魚介類、乾燥野菜、乾燥果実等”を素材にした食べ物は私たちの身の回りにあふれています。たとえば塩漬けの状態で輸入された山菜はそば、おこわ、てんぷら、漬物、そして土産品として私たちは日常的に口にしています。一般消費者向けに直接販売される土産などは期限表示の対象となっているので、パックの裏側にはきちんと必要事項は記載されていますが、消費者に販売される以前の履歴は表示義務の対象外なので、一般消費者には何の情報も与えられません。
一例ですが、日本各地で名産品として、食事に供され、みやげ物として販売されているものが外国産で、しかもいつ採れたのかがまったく不明だとしたら、これほど「安全」とは無縁な食べ物は他にないでしょう。印刷された表示期限以前、それも何年も前に採れた外国の食材を使って加工されたものであれば、何のための、誰のための「消費期限」、「賞味期限」なのでしょうか。そんな食べ物が町にあふれかえっています。
<農林水産省・加工品に関する共通Q&A>
http://www.mhlw.go.jp/qa/syokuhin/kakou2/index.html
<西日本新聞・食品の原産地表示>
http://www.nishinippon.co.jp/wordbox/display/4264/