化学肥料へ向けられてきた誤解
「食の安全」志向が高まり、有機栽培への関心が強くなり、その結果、慣行農業(機械・化学肥料・農薬を使用する従来農法)が目の敵にされてきました。
しかし、振り子が極端に有機栽培へと振れすぎたこともあり、その反省と反動で慣行栽培の正しい評価を求める動きが専門家の間で目立ってきています。
たとえばこれまで化学肥料は自然界にないものを人為的に化学合成して作られた肥料、という誤ったイメージが形成されてきました。
しかし実際は窒素,リン酸、カリの三大養素の原料はすべて自然界にあるものから「化学的に精製され」て作られたものです。
リン酸肥料の代表的な「グアノ」は海鳥の死骸や糞、魚や卵の殻などが数千年から数万年という長期間にわたって堆積して化石化したものです。
またリン酸肥料はリン鉱石を原材料にしていますが、比重の重いリンは地中もしくは深海に沈みこみ、それが隆起運動などで採掘可能な地表近くに出現したのがリン鉱石です。
日本は火山の島国です。火山灰が変化した土(黒ぼく)は黒々として、いかにも栄養豊かな土壌のように思われますが、実際は栄養の乏しい痩せた、野菜つくりに適しない土壌です。
そのため長年の農家の努力により、落ち葉や家畜糞尿を堆肥化した有機肥料を入れて、土壌改良に努めた結果、豊かな土壌に変わったのです。
もともと痩せた土壌を豊かにするには適量の化学肥料を使用することは理にかなっています。
<これからの環境保全型農業>
http://www3.nns.ne.jp/pri/miya3212/pages/siryou/12hiryo.pdf
土壌研究の専門家で東京農大の後藤教授によれば、日本の畑は有機肥料の投入過多で、人間で言えばメタボ状態の肥満状態だそうです。有機肥料にせよ化学肥料のような無機肥料にせよ、日本の農業は過剰施肥状態にある、と指摘しています。
後藤教授は30年間、日本全国の畑の土壌診断をしてきた結果、理想的な土壌とは有機肥料を基礎に、少量の化学肥料を使用した畑であることを検証してきました。
食糧自給率40%の日本は食糧を外国に頼っていますが、リン鉱石、カリ鉱石は日本では産出せず、すべて輸入に頼っています。石油同様、化学肥料の原料も資源の枯渇問題が浮上してきています。日本の農業はいま、限られた資源を過剰に消費する愚を戒められています。
<枯渇する化学肥料・リン
−日本型農業を窮地に追いやる資源争奪戦>
http://blog.h-h.jp/investnews/