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「米作り体験」を終えて


 今回の「米作り体験」の目的は埼玉県美里町の休耕棚田2反(600坪)を借り受け、都市生活者による米作りの体験を通して食と農業への理解を深めてもらうことでした。


 耕作放棄された田や畑は全国的に増え続け、いまや日本全体の休耕農地面積は埼玉県一県に匹敵するほどになっています。少子高齢化に伴う後継者不足と安い農産物の輸入拡大のダブルパンチでこのまま休耕農地が増え続けていけば、日本の農業の先行きはどうなるのでしょうか。

 田んぼはご存知のように雨や雪解け水を一時的にプールする保水機能を果たしています。

 いいかえれば田んぼは災害時の洪水防止用のダムとおなじ役割を果たしています。日本学術会議が農水省へ答申した試算では田んぼを治水ダムとしての代替財として評価すると3兆5千億円にもなるのだそうです。さらに私たちは田園風景に心のよりどころを求めるように、手入れされた田畑にはお金に換算できない多面的な機能があります。


 今回の「米作り体験」はいささかなりとも休耕農地の復活再生に寄与したことになります。その意味で意義あるものと自己評価しています。

 しかし、増え続ける休耕農地の歯止めとしての意義はあっても、はたして有効かどうかは正直なところ迷います。

 というのも、プロの農家がこれ以上続けられないと判断して、耕すことをあきらめてしまった、その同じ田畑に、私たちのような素人や新規就農者がおなじ米、おなじ作物をつくり、維持していけるのかということです。

 しかし、若くて意欲のあるプロの農家がやり方を工夫し、規模を拡大していけばうまくやっていけると判断した結果が、いま国が推進している「認定農業者制度」です。

 小規模農家の小面積の農地を集積して、意欲ある担い手に委ねる「認定農業者制度」は一つの考え方です。


 一方で休耕農地の復活再生を「牧草地」として活用する取り組みがなされています。特に耕作放棄地が目立つ中山間地域で田畑に牛を放牧し、餌として雑草を食べさせるこころみです。耕作放棄された農地をあまり人手と手間がかからないように工夫して、牛の餌の生産に振り向けることは経済合理性にかなっています。


 また牛の餌は輸入に頼る配合飼料が中心になっています。ホルモンや抗生物質が入った配合飼料を外国から輸入した結果、日本の自給率を下げる要因の一つになっています。しかし本来、草食動物である牛は草を食べさせるのが自然な姿です。


 仮に大半の休耕農地を使って、牛の餌が自給できれば、自給率も上がり、経済合理性からも自然の摂理にもかなうアイデアです。

 これは休耕地の復活活用のアイデア、方法としてこれから多くの地域で検討、実践されることでしょう。当NPOとしても今回の「米作り体験」の経験を活かして、今後の休耕地対策を考えていくうえで参考になると考えています。


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