第1回「畑で婚カツ」レポート
はじめに
5月22日(土)、所沢市の「トコトコ農園」で行われた「畑で婚カツ」は男女22名が参加した。
朱で「畑で婚カツ」と大書きしたポスターを駅改札前で高く掲げるスタッフを横目にして通り過ぎる若い人。結婚適齢期の子供をもった母親らしき女性は「どこでやってるの?」と聞いてきた。
西武新宿線「新所沢」駅改札口に集合した参加者はスタッフが掲げるポスターを目ざとく見つけ、西武バスに揺られて予定通り10時前に畑にやってきた。遅刻者が一人もいないところを見ても、参加者の意気込みが伝わってくる。
大半が埼玉県内各地からの参加だが、東京、あるいは甲府や川アの遠方からの参加者も交じっている。中央高速を使い2時間かけて参加したT君は「週末農業」でネット検索し、当NPOのホームページから「畑で婚カツ」の募集記事にたどり着いた。
ある女性の参加者は申し込み時のコメントで「初めての参加で緊張します」と書いてきた。
しかし冒頭の挨拶のとき、受け入れ側の主催者の私たちも負けじと緊張していると、伝えた。
午前中はサツマイモの苗の定植、昼食はバーべキューに焼きそば、それにトン汁の野外料理の定番を作り、午後は「ベンリナとコカブ」の収穫、そしてお見合いタイムというスケジュール。
3〜4人を除いて大半の参加者は本格的な農作業は初めてだが、畑の土の柔らかさと温かさに一様に驚いていた。有機堆肥をたっぷり入れた畑はふわふわの羽根布団のように柔らかい。適度な空気を閉じ込めた土の中は太陽熱で暖められ、外気温より地中温度ははるかに高い。
硬い靴底にコンクリートの硬さを感じる日常とは別世界の畑の土は柔らかく、かつ足に優しい。足元から優しさが立ち昇ってくるような感覚で、気持ちがゆったり、ほんのりしてくる。
サツマイモの苗の正体は茎
サツマイモの苗というが、実は苗ではなく、その正体は茎である。
茎を土の中に挿すように植えると数日後には茎から白い毛根がニョキニョキと生えてくる。地上に出ている茎がしおれていても毛根が生えてくれば全く問題ない。サツマイモは驚くほどの生命力を持った作物だ。
男女ペアの2グループを作り、各グループ1畝を作る。鍬を使い、全員でかわるがわる土を耕し、サツマイモ特有の高い畝つくりをしてもらう。耳掻きで耳垢を取るように、こわごわ鍬を動かす女性。畝がまっすぐにならず途中から蛇行してしまったのはご愛嬌だ。
なんとか畝らしくなったが、次はビニールマルチで畝をスッポリ覆う作業だ。ビニールマルチの両端と左右に土をかぶせしっかり固定する。土かけが甘いと強風にビニールマルチがかぶせた土もろとも、いとも簡単にはがされてしまう。
はったマルチのセンターに等間隔でカッターを使い、穴を開け、その穴に苗を斜めに差し込む。
1時間を予定していた作業は時間どおりに終了。9月末の収穫までの間、適宜デジカメで生育状況を撮影し、参加者にメールで送るように約束する。
昼食は竈の火おこしから
畑には残念ながら上水道も都市ガスも電気も通じてない。
無い無いずくしだが、かえって何も無いほうが面白い。野外料理は不自由さを楽しみに変えるところに面白さがある。
オール電化に慣れてしまうと火をおこすこともままならなくなる。火おこしのコツは小さなものから徐々に大きなものへと燃やすようにすること。燃えやすく、乾燥した材質のものに火をつけ、燃えにくいものへと火を移すこと。また空気の通り道を考えて火おこしすることも重要だ。そうしないと煙で体がいぶされ、人間燻製のようになってしまう。
バーベキューと焼きそば,そしてトン汁を3つの簡易竈で同時に作る。火力が強いので短時間で料理は出来上がってしまう。この間、手が空いている人には焼きマシュマロ用の竹串を鉈で削ってもらった。すべての作業は参加者自身にゆだね、協働でひとつのことを成し遂げてもらう。こうすればおのずと会話を交わすことになる、という狙いだ。
午後は収穫作業
ベンリナとコカブを植えた一畝をすべて収穫する。
今日のために4月6日に種まきをした。種まきから収穫まで、およそ40日が目途になるがそれから6日すぎたためか、少々育ちすぎの感があった。ただ有機肥料で育てた作物は少々収穫が遅れてもすぐには硬くならないのが特徴だ。
収穫作業に1時間の予定時間をとったが、これが大きな誤算だった。
ベンリナもコカブも株元から上に引っ張れば簡単に収穫できる。22人が一斉に収穫し始めたら、あっという間に作業が終わってしまった。時間がたっぷり余ってしまったので、当初予定が無かった袋詰めの作業を自らやってもらうことにした。
男女ペアになって、おしゃべりを楽しみながらゆっくり収穫するような工夫が足りなかったと反省している。
二つの袋にいっぱいのベンリナとコカブは手土産として持ち帰ってもらった。
急に無言になった若者たち
収穫作業が午後2時に終わり、残り3時までの1時間はフリータイムで気になる相手にアプローチするための時間を設けたが、途端に全員が無言状態に陥ってしまった。
こちらとしてはあえて余計なおせっかいは無用と思い、いい意味でほっぽらかしにしたのが、逆効果だった。2月末に「新しい村」で「畑で婚カツ」のトライアルとして行ったイベントのときはあいにくの季節外れな大雨のため、畑ではなく室内での開催になったが、そこではうるさいくらいあちこちでおしゃべりの華が咲いていた。
室内と野外の違いもあるのだろうか、一瞬こちらが焦るくらいみんな大人しくかしこまってしまった。
小さなグループがいくつかまとまり、あるグループはお茶を飲みながら会話を楽しみ、別のグループは450坪の畑に植えられた作物を見てまわるとか、それぞれが思い思いにコミュニケーションをうまくとるだろうと予測していたが、見事に外れた。
やはりそうなるような工夫、演出が主催者側に求められるのだろう。経験不足が露呈してしまった。
今後は参加者同士がスムースなコミュニケーションが取れるような、きっかけ作りの必要性を痛切に感じた。
前もって各人に配っておいた「お気に入りカード」を帰り際に回収したが、フィーリングカップルが1組成立したのでほっとしている。
次回は6月26日開催
6月26日(土)に第2回目の「畑で婚カツ」を行う予定だ。
イベントのメインはジャガイモの収穫、そして参加者の最終的な目的である「お気に入り」の相手探しのプランと演出を今回の反省を踏まえて練りに練っている。次回はカップル成立が飛躍的に増えるような仕掛けをいくつも考えている。
乞うご期待である。
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