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農のある暮らし

2011年9月5日 更新

第2章 働き方を考える

「体験」を重視したNPO活動


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農業活性化のために農業のサポーター役に徹する目的で組織したNPOですがその具体的活動について少し触れてみたいと思います。

簡単な図式としては生活者と農家(もしくは農業)の架け橋役として都市生活者に農業を身近なものとして接し、理解をしてもらおうというのがNPOの主たる活動になります。

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そして活動のキーワードは「体験」です。

見るとやるとでは大違い、このことはあらためて言うまでもなく誰もが経験していると思います。

習い事やスポーツでもそうですが、初級、中級、上級と必ず段階をおって徐々にうまくなっていきます。

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農業について言えば習い事の初級にあたるものが「体験」ではないかと考えています。

NPOの活動としてはじめに取り組んだのが「米作り体験」でした。

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体験をしてもらう対象者は都市生活者ですから、体験できる場所は都心から出来れば2時間以内であることがベストです。そして野外で半日かけての農作業ですから、トイレ、水道、出来れば簡単に着替えができる施設があればなおベストです。そして肝心なことは作業のお膳立てと農作業を指導してくれる人が必要になります。

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米作りはとても手間がかかり、収獲までの期間が約半年近くかかります。八十八の手間がかかるので「米」という字がうまれたとさえ言われています。

「米作り体験」では5月に田植え、7月に田の草取り、9月に稲刈り、そして10月に収穫祭の4回の体験を基本にしています。

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残りの作業は委託先に全部お任せしています。「米作り体験」はいいとこどりで、現実の米農家の実情を伝えていないと批判する人もいます。確かに八十八分の四の作業で「米作り」をしたとはいえません。しかし、この批判に対して私はこう反論しています。

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プロの米農家でも最初は誰もが素人です。経験をつむことによって年々、うまい米を作ることができるのです。米作りの名人といわれる人は実に謙虚で、米作り一筋30年といっても、たった30回しか米作りをしていない。米作り農家は死ぬまで勉強だという話が強く印象に残っています。

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種類によって野菜は同じものを年間5〜6回作ることが出来るので、いろいろ技術的な工夫をすることができますが、米は一年一度だけしか作れません。

過去4回の「米作り体験」に参加した人たちは30歳代から40歳代の子供づれの夫婦が大多数を占めます。なかには70歳代の祖父がお孫さんを連れて参加していました。

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「米作り体験」は埼玉県の宮代町の田んぼを借りて行ってきましたが、参加者は圧倒的に都内在住の方々です。

八十八回の作業を親子連れの初心者が体験するのは不可能だし、あまり意味がないように思われます。たとえいいとこどりでも小さな子供が泥んこになって苗を一本一本手で植え、秋に稲刈りを体験したことで将来彼らがどれだけお米に関心を向けてくれるか、容易に想像がつきます。

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教育は長い目で見なければなりません。米作りもそうですが、農業を楽しむことが特に小さな子供にとっては重要なのです。いい思い出作りをしてもらうこと、それが「体験」のもつ最大の効果なのです。

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今年2011年度の「米作り体験」は東日本大震災と福島第二原発事故の影響で、例年の10分の1に参加申し込みが激減しました。小さなお子さんを持つ親たちが野外での作業に大きな不安を抱いたのでしょう。しかも5月から10月までの長期間にわたるイベントは半年先を見通せないため参加を躊躇したものと思われます。

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「米作り体験」は5年目の今年、中止せざるを得なくなりました。まさかこちらまで影響を被るとは露ほど思いませんでした。

「体験」をテーマにした活動は「米作り」に次いで中高年男性に根強い人気がある「そば作り」も手がけました。

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「それでいいのか蕎麦打ち男」の著者、残間里江子に皮肉られた中高年の「そば作り」ですが、出来合いの蕎麦粉を使い、ビルの一室でもくもくと蕎麦打ちを体験するのではなく、蕎麦の種まきから収穫、石臼を使った粉引きまで一連の体験をしてもらおうと企画しました。

脱穀の手間は想像以上にかかります。

脱穀した後もゴミや小さな石を取り除く作業が残っています。石臼は重く、粉を挽く腕もしだいに重たくなります。

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労力と時間を食う国産の蕎麦粉はなかなか手に入りにくく、大半の蕎麦粉は中国からの輸入物です。蕎麦打ち教室で用意された粉をただただ打つのではなく、蕎麦のイロハを一通り知ってもらうことを意図した企画でした。

米作り、蕎麦作りの体験の次は野菜作り体験をなんとか企画し、成功させたいという思いが徐々に芽生え、2008年の春頃から本格的に企画実現のためにアクションを起こしました。