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所沢の"農"情報

2014年9月20日 更新

所沢の“農”事情 第三回

理事 中原幹男

<<<所沢市の農業の課題>>


前回は所沢市の農業の概要と問題点を述べました。


<課題> これから所沢市の農業の課題を浮き彫りにして、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。


みなさんは“農に関心がある”方々ですから、きっと所沢の畑の風景が好きという方はいっぱいいますよね。 所沢市の面積の20%(1,500ha=15,000,000u≒455万坪)が農地で、それを維持しているのは2,100人未満の農業者の方々です。畑作は広い土地を必要とする産業ですが、ここ30〜40年間に増えた工場や倉庫、流通業も広い土地を利用しています。その影響もあり農地はほぼ半分に減ってしまいました。


昔から所沢に住んでいる方々は、この変わりようをどう思っているのでしょうか。工場や流通業は、おそらく農業よりはるかに多い税金を市に落としています。農業だけでは食べていけず、それらの第2〜3次産業で収入を得てきた方も多いでしょう。相続税を払うために農地を手放してしまうことも起こっています。


所沢の農園風景を気にいっている人にとって、これ以上、雑木林や畑がなくなり、巨大な物流倉庫や、鉄の矢板でおおわれた資材置き場や、コンテナの貸倉庫などが増えるのは我慢がならないことです。守るべきは「農家」か?それとも「農地」か?難問です。


農業者の高齢化も全国的に大きな問題です。所沢市の農業者は60代が50%近くを占めていますが、全国平均や埼玉県の平均よりも5才ほど下回っています。しかし、5年間で2才づつ高くなっていく傾向は同じです。


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農業就業人口平均年齢















80才になり後継者がいないので農業をやめてしまう方も多いと聞きます。それに比べ、新しく農業研修に加わり農業を目指す人が少ないのです。平成25年度の研修生はわずか5名でした。


<農家アンケート> 大変興味深いアンケート結果があります。平成24年に市の農業振興課が実施したアンケートです。


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農業経営の状況

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品目別農業経営形態と経営面積の状況

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今後の農業経営

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農業後継者の状況















所沢市の中富地区で10a(約1反)以上の農地を所有している農家204戸のうち106戸から回答を得、集計したものです。年齢を見ると60代が突出しています。兼業農家が半分を占め、専業が20%、農業収入なしが30%もありますが自家用栽培だけやって農地評価の固定資産税を負担しているのでしょうか。不耕作地となっているのかもしれません。


農業従事者数では、「3人まで」が9割を超えています。まさに零細、家族経営がほとんどということです。このアンケートで農家の方々の今後の農業経営についての考え方がわかります。「C規模縮小」の25%を「A規模拡大」が十分に吸収していけると農地が守れることになります。また、後継者が「いる」と答えた55%が「いない」と答えた45%の農地を吸収できるかが課題です。


<狭山茶> 話が少々深刻になりましたので話題を変えましょう。「色は静岡、香は宇治よ、味は狭山でとどめを刺す」これは狭山茶摘み唄の一節です。所沢に住んでいる人はみなさん「狭山茶」をご存知だと思います。ちょっと足を運べば広い茶畑が見れますし、野菜の畑と畑の間にもお茶の木が植わっているところが多いですね。


所沢市のお茶栽培面積は211haで、ほぼホウレン草(203ha)と同じです。茶業農家数は402戸。結構多いですね。荒茶生産量131t、生産額2億4千万円(平成24年度統計)です。埼玉県の狭山茶といっても入間市が一番多く約5割。次いで所沢市と狭山市が各々15%前後です。


日本全国で生産量が一番多いのはなんといっても静岡県です。2番目はどこだかご存知ですか。静岡県は全国の39%(33,400t)。次いで30%(26,000t)を鹿児島県が占めています。お茶は暖かい土地を好むため、埼玉県が北限なのです。静岡、鹿児島では一、二、三、四番茶が採れるのですが、埼玉では一番茶だけです。なので埼玉の狭山茶全部でも全国の0.7%に過ぎません。


狭山茶は昔から地産地消作物です。自園 (自分の畑で栽培)、自製(自分の工場で加工)、自販(自分のお店で販売)。代々6次産業なのです。郊外のところどころにお店がありますが、所沢の街中や裏筋にもお店がありますね。地元の味を大切にしたいものです。


<遊休農地> ふたたび深刻な話に戻ります。農業者の高齢化や後継者不足について先に述べましたが、それらが原因で遊休農地(不耕作地)が年々増加しています。所沢市全体では遊休農地が500ha(耕作地の3割:明確な数値は公表されていません)に達しており、これは航空公園(50.2ha)の10倍に相当します。


市内全体の平成21年度農家意向アンケート調査によると、農業後継について「後継者がいる」が53%で、「いない」が47%にも達しています。およそ半分が後継者がいないのです。今後の農業経営について「拡大3%・現状維持67%」の70%に対し、「縮小したい17%・離農したい13%」が30%にも達しています。「縮小・離農」の理由は「高齢化36%と後継者なし36%」で70%を超えています。残りの20%は「他に就労している」という理由です。


<所沢市農地サポート事業> 「縮小したい、離農したい」という農家は保有農地のうち遊休部分を持っています。その遊休部分も含め手放す意向があり、「農地を売りたい、貸したい」と考えている割合が45%です。これに対し、少ないながらも「農業経営を拡大したい」という人が3%ほどいます。この人たちは借りたり買ったりして農地を増やしたい意向をもっています。


この間をとりもつのが「所沢市農地サポート事業」です。これがうまく機能してバランスが取れれば農地を維持・保全できます。貸出し・売却希望農家が申し出をし、農地サポート台帳に登録され、借受け・購入希望農家も同台帳に登録して情報を交換する仕組みです。


戦後の農地改革による農地分散化(大農家は所有を6町に制限され、それ以上を放出させられた)が農業の生産性向上を阻害してきた面がTPP問題でクローズアップされており、政府も農地集約化に力を入れ始めていますが、「所沢市農地サポート事業」は平成22年に始まったものです。この事業の進捗状況については調査の上、別の機会にお伝えしたいと思います。


狭い日本で集約化しても広大なアメリカやオーストラリアに比べたら勝目はないのですが、明らかに農地の細切れ所有は無駄だらけです。但し、農家にとっては代々所有してきた土地・畑ですから思い入れが強いのは当然としても、土づくりには3年以上を要し、“有機栽培”をうたうにも有機無農薬を3年続けなければ認められません。


また、所沢名産の里芋でも土壌消毒なしには連作障害回避に5年はかかるとのこと。さらに潅水用井戸の有無も畑の交換・集約のネックとなります。


最近、農家の方々と話す機会が増えたのですが、まとまった農地を持っている農家は少なくて、多くの農家が何か所も点在している畑を耕しているのが実情のようです。それだけに機械化だけでなく畑間移動の効率も阻害していて、その解消のためにも行政も支援して障害を乗り越え「農地集約化」に取り組むべきです。


次回は、「所沢市の農業施策」です。




>> トコトコ農園 <<
「トコトコ農園」は安全でおいしい野菜作りを楽しむことを目標にしています。
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