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所沢の"農"情報

2014年12月20日 更新

所沢の“農”事情 第2部 第二回

理事 中原幹男

<<<現地訪問の記録>>


<訪問先 1 関谷農園(下富)> 関谷農園は、200年続く農業の歴史があり、所沢では最大規模の農場です。約20種の作物を生産し、大きく3つの出荷先に販売しています。多品種の栽培、かつ複数の出荷先を持つことで、気候や相場の変動に強い安定した農業経営が可能とのことでした。また、十数年前に干ばつにより大きな被害を受けたことから深井戸を導入したことも、経営の安定化に寄与しているとのことでした。

関谷さんからは、所沢は農業に適した土地であること。農業を目指す若者が関谷さんのところで研修し独立していること。後継者の息子さんはお父さんとは独立した経営で、自然農法を実施していること。ダイオキシン問題で環境改善が進み、農家の環境意識も高まったこと。など様々な話を聴かせていただくことができました。


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関谷農園(下富)














<訪問先 2 陽子ファーム(柳瀬)> 陽子ファームは、30年以上前に有機無農薬栽培を開始し、その後キウイ、ブルーベリーの観光農園を開いたり、ジャムなどの加工も行っています。約150種の作物を生産し、約60軒のレストラン、市内のパン屋店頭、ネットなどでの個人向けに販売しています。都内レストランには、主に仲買人を通じて出荷しています。

有機無農薬栽培を始めたきっかけは、身近な健康問題からとのことでした。その農法がレストランのシェフなどの耳に入り、そこから注文を受けて、現在は約150種の作物を栽培・出荷をするようになったことです。自宅に様々な人たちが訪れ、その雰囲気に触れ息子さんも農業を志すようになったとのことでした。しかしながら、この地域では農地の転用が進み、農地の集約化などが難しくなっている現状があるとのことでした。


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陽子ファーム(柳瀬)













<訪問先 3 中島農園(南永井・中富)> 中島さんは原発事故で福島県富岡町から所沢市へ避難された方です。所沢住民には気づきにくい土壌や農業環境について、興味深い話をきくことができました。

農業を再開するため、所沢市とJAの協力を得て農地を探しましたが、農業用水の確保に時間がかかりました。そのようにして、古井戸のある南永井と中富の農地で、イチゴ栽培を再開できたとのことです。ある時、中島さんは自信作のイチゴ4パックに、各々1280円の値付けをして三芳PAで販売し、見事に売り切ったとのことでした。この話は、農家は自分の作物がいくらの価値があるか把握していることの大切さと、首都圏の消費者の懐の深さを物語っていると思います。現在、中島さんは新規就農者と一緒に活動しており、その直売のノウハウも伝授してもらえるものと期待しています。


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中島農園(南永井・中富)













<訪問先 4 NPO法人がんばれ農業人(トコトコ農園)(下富)> トコトコ農園は4年前に代表の神山さんがNPO法人として開設しました。農地は大学の同窓の縁により地主の援農という形で使わせてもらっています。会員制で現在は35名で、共同耕作・共同収穫をおこない、収穫物は会員に分配しています。4.5反の畑に30種類以上の野菜を栽培しています。農家出身者はいませんが、詳しい人を中心にマニュアルを作り作業をしています。

農家出身でない神山さんが、NPO法人「がんばれ農業人」を始めた動機は、生活者に農業への理解を深めることでした。トコトコ農園では農業を学びたいという動機で会員になる人は多いようで、この精神は生かされています。遊休農地を農業教育の場として活用することは、非常に意義のあることと考えられます。しかし、現在は様々な課題に直面しています。私たちは、農地の活用・保全活動を進めているNPOに対して、行政や農業関係団体がもっとバックアップをするように、働きかけることが必要と考えます。


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NPO法人がんばれ農業人(トコトコ農園)(下富)














<訪問先 5 NPO法人ゆうき福祉会(南永井)> 福祉NPO法人の遊休農地活用事例です。ゆうき福祉会は「障がい者就業支援NPO」として、主に所沢地方総合食品卸売市場内で野菜の包装作業や食堂事業をしています。

就業支援を希望する障がい者の増加に応えるため、3年前から市内東部の遊休農地を所沢市の仲介で借り、3反の土地に800坪のハウスを設置し、水耕栽培でベビーリーフを生産しスーパーへ出荷しています。水耕栽培は、作業が簡単で障がい者の就業に向いているほかにも、様々な利点があるようです。

福祉関連として、近年農作業には認知症の進行を遅くする効果があると言われています。耕作放棄地を介護予防に活用すれば、環境保全と介護費用削減の一石二鳥の効果が期待できるのではないでしょうか。


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NPO法人ゆうき福祉会(南永井)













<訪問先 6 (株)Corot(山口)> 山口で古民家付き農園と、農家と需要家の間を取り持つ事業を進めている海orotは、オーナーの峯岸さんが祖父祖母から受け継いだ古民家を、農業や農村の生活に魅力を感じる都会の若者たちが利用できる「農家民泊施設」として3年前に開設しました。これは埼玉県で第1号とのことです。親戚から借りた畑は飛び地で且つ小規模で農業としては採算が合わないため、貸農園として古民家とセットにしています。

(株)Corotの事業の特徴は、農地と農家の新しい活用にあります。従来の農作物を作って売る生産型農業ではなく、農家民泊や貸農園を楽しむ体験型農業を特徴としています。グリーンツーリズムとは農村や山村などの地域において自然、文化、人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動のことですが、都心から見て所沢にもその魅力があるということを感じました。文化活動として、各種教室に利用を広げているほかに「所沢アートリエ」などイベントも開催し、地域との共生・つながりも重視しています。


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(株)Corot(山口)













<訪問調査のまとめ>

訪問調査の結果をまとめますと、所沢農業の地域特性として、所沢は自然災害が少ない、大消費地に近いなど、農業に向いた地域だということがわかりました。多品種栽培や多角的な出荷による安定的な経営、需要者と直接交流・挑戦ができる環境、マンパワーなど持続的な農業経営が可能なことも学びました。 また、環境に配慮した農業経営が各所で実施されており、これも所沢の農業を特徴づけるものと考えられます。農地の保全に対しては、農家以外のNPOが様々な取り組みをしていることを学びました。しかし、農地の利用については様々な制約があることも学びました。

もちろん良いことばかりでありません。例えば灌漑用水がないため深井戸が頼りで、数百万円の初期投資は小規模な農家にとっては大きな負担であること、また古くからの農業地域では土地所有関係が複雑で、集約化が困難であること、などがわかりました。

現在、所沢の耕作放棄地は、全耕地面積の約12%で、耕作放棄地のうち61%は、すでに農業から撤退した農家の所有です。憲法で保障された「職業選択の自由」と農地の利用を制約する「農地法」との矛盾が、耕作放棄地を生みだす一つの原因となっています。農地利用者の規制緩和が耕作放棄地の有効な活用対策になると考えます。


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訪問調査のまとめ















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「トコトコ農園」は安全でおいしい野菜作りを楽しむことを目標にしています。
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メール:support@ganbare-nougyoujin.org