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所沢の"農"情報

2015年11月20日 更新

所沢の“農”事情 続編 第二回

理事 中原幹男

<<農業後継者のいない農地>>


前シリーズのレポートで、所沢の農業最大の課題は営業農家約1000戸のうち農業後継者がいるのはおよそ半分の農家だけ、ということを報告しました。土地を相続する子女はいても、既に他の職業に就いているケースがほとんどです。そのような畑はどうなっていくのでしょうか。


下富のある農家では、兄弟で畑を相続したものの、弟は農業をやっていないので分筆された弟の畑は雑草が生い茂り、弟一家は畑の土埃を嫌って転居してしまいました。


親から農地を相続した場合、相続人が農業を続けるのであれば農耕によって畑は保全され、申告によって相続税支払いが30年間猶予されます。その後も農業を続けていれば相続税は免除されます。相続人が耕作しないのであれば相続した畑は他の農業者に売却するか貸し付けることによって畑として保全されますが、“市街化区域”内の農地の場合納税猶予は自作地にしか適用されないため、第3者に貸すと即猶予期限がはずされ相続税を遡及されてしまいます。


畑として耕作維持できない場合すぐに雑草がはびこり、耕作状況を調査する農業委員会の指摘の度に業者を雇って雑草を刈り耕転するはめになります。


1968年の 都市計画法によって日本の土地は「市街化区域」と「市街化調整区域」に2分法で線引きされ、相当な面積の農地が「10年以内に優先的かつ計画的に市街化をはかるべき」土地として「市街化区域」に組み入れられました。


所沢市では1970年、全市面積7,184ha(100%)のうち「市街化区域」が2,693ha(37%)、「市街化調整区域」が4,491ha(63%)となり、この線引きは今もほとんど変わっていません。「市街化区域」内の土地は宅地並み課税が前提ですから、農地も高い税金を払うことになりました。


その後、優良農地の営農を保護するため「生産緑地」と「宅地化農地」に区分する法律ができ、その中で「生産緑地」に指定された農地は固定資産税が低く抑えられ、転用が自由な「宅地化農地」に区分された農地は引き続き宅地並み課税を被ることになりました。


つまり、本来営農を永続するべく畑が「市街化調整地域」に線引きされたはずなのに、当時の住宅需要の高まりから優良な農地まで「市街化区域」に組み入れたものですから、宅地並み課税に耐え切れなくなった土地持ち農家の負担軽減のため、本来の目的から外れる法律が作られたのです。


その後のバブル崩壊によって土地需要は弱まってきたにも関わらず、畑が減って宅地が増える傾向が続いています(資料1)。


クリックすると拡大されます。 (所沢市民大学22期日本の農業グループワーク発表資料を転載。出典:所沢市統計書 資産税課)

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資料1. 所沢市土地利用面積の推移
















その要因として考えられるのは、農家の所有する不動産のうち雑木林・農業施設など農地以外の土地課税が営農や相続を圧迫しているため、「市街化区域」内農家はいざというとき土地を切り売りせざるを得ないのです。特に相続時に農地以外の資産に対する高い相続税を支払うため、農地を処分することにつながっています。そのような事態に備えて宅地に転用できる「宅地化農地」を温存している農家が多いのです。


「市街化区域」の「生産緑地」は指定後30年が経過すると、農業を継続しない場合自治体への買い取り請求申請が可能になります。その農地を自治体が公共緑地として買い取り農業公園等として利用できれば、“みどりの環境”が維持できるのですが、買い取る財政基盤が無ければ入札により開発デベロッパーなどへの売却・転用となってしまいます。


平成4年に改正生産緑地法が施行されたので、あと7年後にその時期を迎えます。その時に貴重な“みどりの資産”をどう保全し有効活用するか、所沢市として大きな課題です。


畑は本来食料を作るためのものであったのに今や一部の農家にとって持て余すものとなり、耕作放棄のペナルティが緩いため雑草どころか木も繁り原野になっていったところもあるようです。


畑は、農地法・農振法によってその転用が厳しく制限されていますが、以下のケースでは条件付きながらも転用が認められ耕地ではなくなってしまいます (写真1、写真2)。


クリックするとリンク先を表示します。

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写真1. 資材置き場に転用され矢板に囲まれた農地。手前は耕作放棄されている茶畑。

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写真2. 資材置き場転売の看板写真 (写真1とは別の物件)

















このままでは所沢市の“農の景観”はどんどん失われていき、ますます東京のバックヤード(モノやヒトのストック・供給基地)になってしまうでしょう。


*「市街化調整区域」内の農地転用が可能な事例(所沢市産業経済部農業振興課資料より)

公共施設や公共事業収用移転

診療所・幼稚園・保育園

集合住宅等の自治会が設置する駐車場

事業所が使う通勤用等の駐車場

資材置き場

ドライブイン、ガソリンスタンド

既存施設の拡張

墓地


「市街化調整区域」では共同住宅や建売住宅への転用は認められていないのですが、毎年12〜17ha(西武ドーム3〜4個分)の転用実績がある中で住宅への転用が約半分を占めています (資料2)。これは先に述べたように「市街化区域」内農地の住宅転用が止まらないことを示しています。


空き家が増えているのにもかかわらず首都圏ではまだまだ新築住宅が売れるし、相続の際、更地よりも土地付き住宅の方が税金が有利ということが住宅転用の背景にあると思われます。


クリックするとリンク先を表示します。 (所沢市民大学22期日本の農業グループワーク発表資料を転載。出典:所沢市統計書 農業委員会)

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資料2. 所沢市内農地の転用状況


















(次回へ続く)




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