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所沢の"農"情報

2015年12月20日 更新

所沢の“農”事情 続編 第三回

理事 中原幹男

<<新規就農者の状況>>


所沢の耕作放棄地面積は、平成22年の埼玉県データ(農林業センサス)によると182ha(西武ドームの43倍)にもなっており、さらに増える傾向にあります。農業者の高齢化による耕作放棄地を引き受ける新規担い手はいるのでしょうか。その就農のしくみと実態を探ります。


現在、埼玉県内のこの地域(川越、所沢、鶴ヶ島等10市3町)での新規就農の入り口となっている「JAいるま野担い手塾」卒業生は、平成23年の開塾から平成26年までの4年間で合計わずか16名です。この16名に対しJAがあっせんした耕作放棄地は8ha(800a、80,000u、約80反、約24,000坪)です。


そのうち所沢市で就農した担い手塾卒業生は今まで7名で、農業委員会やJAの仲介により0.5ha〜1.5ha/人の農地を耕作しており、計7ha程度に広がっています。


現在、所沢市籍入塾者(2年制)は、平成26年3名、平成27年5名が研修を受けており、卒業後の農地活用が期待されます。


「JAいるま野担い手塾」については後述しますが、新規就農者に対しJAや市町村はもっと農地借用や取得がしやすいように支援すべきと考えます。


ちなみに、担い手塾で研修用に1人当たり30〜50a(約3〜5反、約900坪〜1,500坪)の耕作放棄地をあっせんされますが、この広さでどのくらいの生産高になるか計算してみました。


所沢市における普通畑(果樹、桑、茶等の樹園地を除く)の作物生産額(平成17年統計)10aあたり約44万円/年をあてはめると、年間約220万円となり諸経費を差し引いた所得はその半分以下ですから、補助金150万円/年(最長5年)をもらっても、土づくりから収穫まで1〜2年かかることを考えると大変厳しいスタートとなります。


<<新規就農者の声>>


数年前に所沢市の農家で研修を受け、下富で新規就農者となってがんばっている30代の男性に聞きました。その男性は、現在の農業者が高齢化し減少していく状況を逆にチャンスととらえ、農業の世界に飛び込んできました。


これまで企業に勤め社会経験を積み、自分ですべてをマネジメントできる農業に魅力を感じ、将来的に2町歩(2ha)以上の畑を持って従業員も雇い、ネット販売や輸出も手掛けたいという希望を持っています。


下富の農家の信頼を得て指導を受けながら30a(約3反)の農地を借り、野菜を栽培し、JAを通さず自分で品質・価格をコントロールできる大型直売所(昨年オープンした“食の駅”(写真1)で販売しています。


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写真1. 埼玉県道126号所沢堀兼狭山線(東京狭山線)沿いの大型直売所“食の駅”















もう一人30代前半で、所沢市に移住してきた就農者に聞きました。この男性は沖縄の農業者に雇用されていたのですが、結婚を機に将来のことを考え、日本全国のデータを集めマトリックス状に評価比較して、農業で食べて子育てもできる地として所沢を選んだというのです。


現在、下富地区堀兼の畑を借り行政の支援を受けて研修中ですが、地元に受け入れてもらうにはまず、地元の農家と同じやり方で同等の品質のものを作って認めてもらうのが入り口だ、と強調していたのが印象的でした。


こういう若手の人材がこれまでのような家族経営を、ITも駆使した農業経営に転換していくものと期待され、貸借や売買で畑が活用されれば耕作放棄地も増えずにすむでしょう。


<<所沢で新規に農業経営する方法〜1例>>


所沢で新規に農業者になって経営する(営農)方法を探ってみました。


高校の卒業証明書を持って、埼玉県農業大学校(熊谷市)の一般入試を受験します。(資料1)


クリックするとリンク先を表示します。

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資料1. 埼玉県農業大学校(熊谷市)の平成28年度学生募集パンフレット

















試験は、国語・数学T・小論文・面接ですが、国語・数学Tが苦手な場合、短期農業学科(1年課程)の小論文・面接だけの試験を受けます。合格すると、授業料1年分118,000円を払い込みます。


受験の年齢制限はありませんが、45歳以上では国の支援金受給対象外となります。この短期課程で、早期就農をめざした基本的・実践的な野菜栽培技術を学習しながら、年間150万円の「青年就農給付金〜準備型」を県を通じて受け取ることができます。


農業大学校を無事卒業できたら、JAいるま野が開設した「いるま野地域明日の農業担い手育成塾」に入塾し模擬経営を始めます。JAが借り受けた遊休農地30a〜50a(約3反〜5反)を研修圃場として、1戸の農業者が指導・相談役となり、JAが肥料・農薬等を提供し農産物の販売を支援します。


担い手塾では2年間実践研修を受けながら、「青年就農給付金〜経営開始型」150万円を2年間受け取ります。この給付金は最長5年間受け取ることができますので、経営が軌道に乗るまでの最低所得が確保できます。


この担い手塾の研修修了認定には、3つの基準があります。

1. 農地の管理ができるか

2. 売り上げをある程度確保できているか

3. 地域で人間関係を構築できているか


3番が基準のひとつになっているのは興味深いことです。畑や空気や土でつながっているので、農薬散布、マルチシートの飛散、病害、虫害、雑草の種飛散等々、隣の畑に結構影響があるものです。


また、近隣の土地持ち農家と親しくなっていないと、畑を拡大したいと思っても良い情報は入ってきません。他に自治会等近所付き合いも大切です。新規就農者の一人が言うように、まずは同じ土俵に乗るのが大事ということです。


さて、この研修に認定・合格すると、研修圃場として使った30a〜50a(約3〜5反)の農地は、農業委員会による利用権設定を経て晴れて自分の管理「畑」となります。


他の市町村では、定年後の年金就農者を認めるところがあるようですが、所沢では、農家にUターンしない限り農家出身でない45歳以上の者が営農することは難しいようです。


(次回へ続く)




>> トコトコ農園 <<
「トコトコ農園」は安全でおいしい野菜作りを楽しむことを目標にしています。
ご興味、ご関心をお持ちの方は、何なりとお気軽にお問い合わせください。
メール:support@ganbare-nougyoujin.org