NPO法人 がんばれ農業人 「新しいくらし」
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  • 所沢の"農"情報

    2016年2月20日 更新

    所沢の“農”事情 続編 第五回

    理事 中原幹男

    事例の続き


    <<石坂産業>> 〜自然と地域との共生をめざす新しい企業モデル〜

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    写真1. 石坂産業本社

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    写真2. くぬぎの森交流プラザ

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    資料1. 石坂産業工程

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    資料2. くぬぎの森チラシ
















    かつて、所沢のダイオキシン騒動(1999.2.1テレビ朝日ニュースステーションのホウレンソウなど葉物野菜ダイオキシン汚染報道によって、所沢の農家が大打撃を受けた)のときに、その元凶のように叩かれた産廃中間処理業者「石坂産業」が今、環境優良企業として変貌しています。

    種々の産業廃棄物がある中で、住宅解体廃材(主に50km圏内で発生した)に絞って有償で受け入れ、選別〜中間処理の工程を建屋で覆い、内部は大型集塵機によって粉塵を吸引し、トラック出場時のタイヤ洗浄も行うなど、外部へも粉塵を飛散させないよう対策しています。

    また、当時の騒動で焼却炉を廃止したので煙を含む有害物質を排出していません。さらに、市のクリーンセンターのように建屋内に見学通路を作り、廃材持ち込みトラックの入場から、選別〜中間処理工程、処理済品の持ち出しトラックの出場まで見学者に公開しています。

    これはおそらく他の産廃業者では例のないことでしょう。現在、一戸建住宅にお住まいの方は、是非一度見学されるとよいでしょう。


    同社は、「自然と地域との共生」を理念とし、工場周辺の“くぬぎ山”の地主から借り受けた広大な里山(雑木林と畑)の保全活動にも取り組んでいます。今では、石坂産業が管理する敷地は17ha(西武ドーム4個分)に及び、その9割が緑地、1割が工場・事務所・駐車場となっています。

    くぬぎの森保全林、親水池や花木園、体験農場を作り、“三富今昔語りべ館”や“交流プラザ”も作り、地域貢献活動を進展させる土台を完成しました。こうしたしくみが埼玉県から「体験の機会の場認定制度」〜こどもたちに環境教育・自然体験活動機会を提供する施設を都道府県が認定する制度〜の認証を取得しています。

    企業の“環境経営スタイル”としては、プレゼンがわかりやすく、マスコミにも取り上げられるモデルとなっているようで、ひっきりなしに企業や自治体、政府からも見学に訪れています。


    この企業の“昔”を知っている方は、批判を浴びていた産廃業者から10数年でここまで改革できた姿を見て、驚き、しくみを詳細に知るに従ってやがて感心に変わるでしょう。筆者はニュースステーションのダイオキシン報道を見ていた記憶がありますが、その時は所沢に住んでいませんでした。今は地元住民として、このモデルが安定・成長していって、孫を安心して遊ばせることのできる航空公園に次ぐ“みどりのテーマパーク”になるよう期待しています。

    * 現在はプレオープンのため、法人・団体・個人とも入場予約する必要がありますが、2016年4月23日のグランドオープン以降は、屋外施設のみ予約なしに入場できるようになる予定です。


    <<シルバー農園>> 〜所沢シルバー人材センターによる営農事業〜

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    資料3. 会報つどいの樹記事

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    資料4. シルバー営農事業参加者募集チラシ

















    農業と関係のない法人が農業に進出するのは、まだまだ障壁があります。そのような中で、公益社団法人である所沢人材センターが営農に乗り出しました。

    西狭山ヶ丘2丁目の遊休農地1.8反(約1,800u)を借り、平成25年5月に第1農園としてスタート。10月には三ケ島5丁目で1.4反(約1,400u)の第2農園を開設しました。

    20名の人材センター会員によって野菜の栽培から直販まで手掛けています。

    シルバー農園設立に当たっては、同センターの農家出身者が熱意をもって農地の持ち主と農業委員会、農業振興課との交渉の結果、なんとかシルバー人材センターの新規事業として立ち上げることができました。

    直販方法は、シルバー人材センター事務局、松が丘自治会中央会館、富岡フラワーヒル、和ケ原2丁目、元町コミュニティ広場等々で、常設ないしはイベント販売を行っています。

    従事する会員に対して時間給ではなく、販売実績にもとづく配分金方式なので、栽培を始めてから売れるまで実入りはありませんが、菜園作りが楽しみな定年退職者にとって副収入の道が開けるという大変ユニークな試みです。


    販売するからには指導者・責任者が欠かせず、また、作業時間が内容や時期によって大きく振れるため、就業時間制限等課題はありますが、是非広がってほしいと注目しています。農地を持て余している農家からもっと借りてほしいという要請はあるのですが、体制が追いつかないというところです。

    “遊休農地”と“60才以上の人材活用”、そして農作物の“地産地消”という課題を複合的に解消する所沢ならではのモデルケースが成功するとよいですね。


    <<砂川農園>> 〜ソーラー発電で安定経営〜

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    写真3. 砂川農園作業所ソーラーパネル

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    資料5. JAいるま野太陽光システム施工チラシ
















    個人農家でも農地や雑木林を有効活用している例があります。中富の砂川農園(ワークマン隣接)は早くから太陽光発電を開始しました。

    平成14年、作業場の屋根に4kwのソーラーパネルを設置し、おそらく所沢の農家としては初めての再生エネルギー発電だったと思われます。

    平成21年に余剰電力買い取り制度ができたのを機会に、10kwに増設。この増設分6kwのシステム費用に対し、県の中小企業対策補助金100万円を充当し、同時に自宅屋根にも10kwを新設。売電単価48円/kwh(10年間固定)という初期好条件契約を結ぶことができたため、10年以内の償却が見込めるでしょう。

    さらに平成24年には、作業所の屋根に20kw増設し、計30kwとなり、売電単価42円/kwhで20年間固定の契約を結びました。


    次に遊休農地9反(約9,000u)を利用して500kwの発電システムを計画しましたが、県と農業委員会が農地転用を許可せず、断念。そこで農地転用許可も要らない雑木林(雑種地)3反(約3,000u)に200kwのパネルを設置し、発電を開始しました。

    売れない、貸せない、建てられない雑木林をうまく有効活用しているのです。ただし、その分、良質な林の緑が失われているのであれば残念ですが・・・


    筆者の試算では、200kwの発電システムで年間365,000kwhの発電量が得られ、全量売電(平成25年度買取単価36円/kwh)した場合、売電金額は1,350万円/年となり、1反当たりでは450万円/年です。これは所沢の野菜販売額平均44万円/反の10倍にもなります。

    この農家がソーラー発電を思い立ったきっかけは、産廃焼却によるダイオキシン汚染問題でした。三富の美しい環境を守り、きれいな空気を取り戻したいという気持ちから、クリーンなソーラー発電を自前で取り組むことにしたのです。

    まだ、電力会社の再生エネルギー買い取り制度も、国や自治体からの補助金もないころのことですので、随分、先進的、挑戦的な試みだったと思います。


    この農家は、農業経営におけるソーラー発電事業のメリットを次のように説いています。


    『・太陽光発電システムはお天気次第だが、所沢の年間日照時間は安定しており、ほぼ、売電収入を予想できる。

    ・季節変動はあるが、農作物の作柄や相場変動に比べたらはるかに安定している。

    ・維持費は、草取り人件費やセキュリティコスト、保険料程度しかかからない。

    ・初期投資はかかるが、固定価格買い取り制度により9年も経てば全額回収できる。

    ・電力買取価格が下がっていくが(平成27年度:27円/kwh)、設備コストも下がっているので、農家の副業として経営にプラスになる。


    このようにソーラー発電事業は営農の支えになるので、行政が農地転用に柔軟に対応してくれれば、農地の有効活用につながる。

    最新のやり方として、ソーラーパネルの下で作物を栽培するソーラーシェアリングは、それに適した作物を見出すことにより有力な事業の可能性がある。』


    というのです。


    次回、ソーラーシェアリングについてレポートします。


    (次回へ続く)




    >> トコトコ農園 <<
    「トコトコ農園」は安全でおいしい野菜作りを楽しむことを目標にしています。
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    メール:support@ganbare-nougyoujin.org