NPO法人 がんばれ農業人 「新しいくらし」
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  • 所沢の"農"情報

    2016年4月20日 更新

    所沢の“農”事情 続編 第七回(最終回)

    理事 中原幹男

    <<農地サポート事業>> 〜所沢市行政の取り組み〜

    “農事情"初回のシリーズで、所沢市が平成22年度から始めた農地の売買・貸借を仲介する「農地サポート事業」を紹介しました。


    日本全国でも同様ですが、所沢の農地は相続等により細かく分筆され、1軒の農家が点々と散らばった農地を耕作しているのが実情です。トラクターを遠くまで運転していったり、肥料を撒くのも収穫するのも畑間(2〜3km離れている場合もある)を移動しなければならず、非効率極まりないのです。


    農作業の効率化方策および耕作放棄地化防止策として期待される「農地サポート事業」の進捗状況について、農業委員会に聞くことができましたので、私見を交えて報告します。


    平成22年から平成26年までの5年間で、このサポート事業に登録したのは240人。(所沢農業者約2,000人の12%)登録面積は54ha(畑地目1,749haのわずか3%)にすぎず、そのほとんどが“売りたい"ではなく“貸したい"畑です。畑を資産として保有する意識が高いのが、登録ボリュームの少なさの原因と思われます。

    この登録面積54haに対し実際に取引が成立したのは、5年間で17ha(わずか30%)と、畑地目全面積1,749haの1%に過ぎません。


    3〜5反(0.3〜0.5ha)くらいのまとまった広さの畑が登録に出ると取引成立が早いが、成立せず残っている畑は、吾妻、山口地区の狭小のものが多く、引き受ける農家が出てこないため耕作放棄地化していきます。

    残念ながら、農作業の効率化方策および耕作放棄地化防止策としてスタートした「農地サポート事業」は、行き詰っているのです。


    このような狭い畑こそ市民が借りやすくなれば、市民の力で保全できると思います。ところが残念ながら行政は市民の力を活用することを全く考えていません。


    所沢市としては、市民が野菜や花の栽培を通じて農業に理解を深めるように、市内7か所に畑を開放しています。面積は1区画が20または40uで、1人または夫婦で野菜作りを楽しむには適当な広さで、料金も年間3,000円、6,000円と格安です。


    合計413区画の抽選倍率は2倍以上と、応募が多いにもかかわらず、開設以来10年以上経っても1か所も増えていません。何故でしょう?

    理由の一つは、利用者が勝手気ままに栽培し、あるいは雑草だらけにしているので、近隣農地に迷惑がかかったり、見栄えが良くないため、周辺の農家や住民に評判が悪いのです。


    確かに、区割りの市民農園は細切れで、水遣り用のペットボトルや肥料袋等が野ざらしになっていたり、農家の畑に比べると景観は劣っています。(写真: 区割り農地)

    市民のニーズは分かっていても、地元のクレームの多さ、大きさを考えると、今のような区割り貸付方法では拡大したくないのも理解できます。


    撒く水もない、トイレも駐車場も、農具置き場もない。これでは近くに住んでいる人しか利用できません。悪循環が制度の現状固定化を招いている事例です。


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    写真. 景観を損ねる、市民農園などの区割り農地















    <<農家の農地に対する意向>> 〜持て余しているが手放したくない〜

    所沢市の農業委員会による農家意向アンケート調査(平成25年度)によると、今後の農業経営について「縮小したい(21%)」と「離農したい(13%)」の合計は34%にものぼっています。(資料1,2,3)


    その理由の1位、2位は、「高齢化(39%)」、「後継者がいない(37%)」で、合計76%です。その人たちは齢を重ねるにつれ畑を持て余していくので、「売りたい」「貸したい」という意向が40%以上になっています。


    現実問題として、先祖代々の畑を手放すことは大変抵抗があるものでしょうが、その理由は置いといても、市街化区域にある畑ならともかく、市街化調整地域の畑の売買価格が7~8千円/坪(1反200万円程度)と大変安く、そんなに安いなら売らずに貸そうと考えるでしょう。農業者間での1反当たり賃借料は、所沢市の平均で1万4千円です。固定資産税を十分賄える金額のようです。ちなみに、農地転用して他用途に売却できると20〜30倍の価格になります。


    「農業をしたい人に貸したい」「農地をきれいに耕作してくれる人がいたら貸したい」「お花畑や市民農園などに使ってほしい」「無償でもよいので貸したい」「高齢のため耕作できないので、希望者がいたら耕作してほしい」等々の意向が多いのです。それなのに、農地サポート事業に登録される面積はわずか3%でしかなく、意向と実態とのギャップは大きく、本音はどちらなのかわかりません。


    安心して貸し出せる制度さえできれば、サポート事業に登録される畑はもっともっと出てくるものと思われます。


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    記事関連の写真

    資料1. 農家意向アンケート調査(平成25年度)

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    資料2. 同

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    資料3. 同

















    <<一般市民による耕作放棄地の活用>> 〜実際にはかなりの面積を市民が保全している?〜

    所沢では、昭和40年代以降ベッドタウン開発が進んで、人口が4〜5倍に膨らんできたのですが、新移住者も住んで30〜40年にもなると農家の知り合いもでき、信頼関係によって畑を借りられるようになり、今ではそのような畑で野菜作りを楽しんでいる人がたくさんいます。


    市民大学22期農業研究グループでは、主に22期と23期の受講生対象にアンケートをとってみました。(回答数126)それによると約11%(14人)が現在野菜作りを楽しんでおり、20%(25人)が新たに野菜作りをやりたいと希望。その両方での面積ニーズは約600uです。


    この数字を市全体にあてはめて類推するのはちょっと乱暴ですが、市の高齢者(65才以上)約8万人に11%を適用し、使用面積15u/人を掛けると、12haの畑がすでに保全されているかも知れません。また、今後新たに野菜作りをやりたい希望者率20%を適用するなら、8万人×20%×15u=24haの保全可能面積となります。

    これは、将来にわたって耕作放棄地を保全する大きな潜在パワーではないでしょうか。


    私が知っている多くの高齢者が、すでに野菜作りを楽しんでいます。その使っている畑は、知り合いの農家との縁でほとんどが無償です。


    行政側は、農地は生産手段であり、あくまで農産品を産み出す財として管理してきました。ところがその方法では、“みどりの資産"としての畑を維持することは現実にできなくなっているのですから、これからは所沢市民のパワーを活用し、農家の意向とマッチングさせていくことを重視すべきです。


    高齢者の認知症予防には菜園活動が有効といわれています。また、“まちづくりエコタウン構想"には“農の風景"の視点も必要です。市の農業振興課、農業委員会、高齢者福祉課、環境総務課は、縦割り意識を抜け出し、互いに連携して、農家と市民のニーズに応えてもらわなければなりません。


    “自産自消"ができるのは近くに畑があるからです。“週末農業"はヨーロッパでも盛んに行われており、日本でも芸能人が地方で農業に取り組んでいる姿がマスコミに報じられています。


    所沢でもそのようなしくみを作れば、耕作放棄地の活用にもつながります。所沢の農家では、建屋敷地内に2軒目を建てているところが多くあり、そのうちの1軒が空き家になっているケースがいくつもあります。こういう空き家を“週末農業"希望者に畑とセットで貸し付けるとうアイデアはいかがでしょうか。


    所沢の市民が畑を借りる方法の一例として、山口公民館方式があります。畑を持て余している農家が公民館とタイアップして野菜作り講座を開設し、その受講生が実習に続けて農家から区割りで畑を借り、農家の指導を受けて栽培をしています。指導の効果で栽培景観が保たれ、かつプロ並みのおいしい野菜が採れているようです。


    所沢市と東京農工大学が農業振興のため連携協定を結び、市が借り受けた柳瀬地区の農地でサトイモ栽培の実証試験に取り組んでいます。その傍らで、東京農工大学の指導の下、市民大学OBが実証試験に協力し、野菜の栽培を楽しみながら畑の保全にも一役買っています。


    市民のパワーを活用して農地を保全するのには、農地利用を完全にフリーにするのではなく、ある程度の秩序を保つための司令塔が必要です。その意味では、農家あるいは農業団体がコントロールタワーになって、上質の体験と収穫を提供する体験型市民農園が有効と思われます。市内にも4つの体験農園が開設されています。(所沢の里=北秋津、ふれあい農園=三ケ島、ベジファームTOMO=下安松、ファームドウーガーデンズ所沢=下富)

    こういうところでは、利用者の満足度は高いし、近隣からも歓迎されるでしょう。


    <<結びとして>>

    2年間にわたり所沢市における“農事情"をレポートしてまいりました。長のおつきあいありがとうございました。


    都心から1時間ちょいで里山(平地林や畑)の風景に親しめる魅力は、“とかいなか"と呼ばれています。“都会過ぎず田舎過ぎず"が良いのです。でも、この風景は残念ながらどんどん失われています。


    所沢市の施政方針は、以前から東京都心通勤者のベッドタウン化でした。今の市政も基本的には同じ考えで、環境や施設の改善・更新を進めているのは良いことですが、バックヤード(人も含めた物流拠点)増強に他なりません。市の長期基本計画では、市街化調整区域を市街化区域に変え、広い畑を住宅地や商業地・工業地に変えようとしています。土地所有者には莫大な売却益が入り、市には税金が入ります。


    現在の市政には、所沢の農業に対する展望が見えません。畑の景観維持派の市民は少数と思われ、流れにあらがいきれませんが、市民の役割としてなすべきことは何でしょう?


    “一人二助"として、

    1. 地元農家の野菜を優先購入すること

    2. 地主農家との良好な関係のもとに、畑の保全に協力すること

    (無償、有償貸借や、農家主催の体験農園入会、援農など)

    を提唱します。


    緑のトラスト運動を畑にまで広げられないものでしょうか。トトロの森トラスト運動のような市民活動を、畑に対しても起こせないものでしょうか。


    <完>




    >> トコトコ農園 <<
    「トコトコ農園」は安全でおいしい野菜作りを楽しむことを目標にしています。
    ご興味、ご関心をお持ちの方は、何なりとお気軽にお問い合わせください。
    メール:support@ganbare-nougyoujin.org