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トコトコ農園通信

2011年9月5日 更新

小麦の種まきから製粉まで


開園2年目の秋も深まった2010年11月末に小麦の種を播くことにした。

この年の夏、日本列島は記録的な猛暑にすっぽり覆われ、残暑もいつになく厳しく、秋冬野菜の生育は最悪だった。

気温が高すぎて種まきのタイミングが全くつかめず、秋冬野菜の苗作りスケジュールは立てようもない始末だった。ブロッコリーなどはセルトレイに播いた種のほとんどが発芽せず、仕方なく苗を購入して移植してみたが、生育途中で大半が暑さと乾燥で立ち枯れしてしまった。

冬の鍋料理の具材であるハクサイもダイコンも似たりよったりの状況だった。


櫛の歯が欠けたような畑を見るたび、収獲を楽しみに来ている会員に申し訳なさがつのるばかりだった。

そこでソラマメ、キヌサヤ、スナップエンドウのように年内に種を播いて翌春に収獲するもので豆類のほかに何かないか考えていたところ、小麦作りを思い立った。

うまくいけば、うどんやパンもできるので収穫祭の食材として十分使えるだろうという読みもあった。

小麦つくりは初めての挑戦でうまくいくかどうかは全く自信はなかったが、何事も楽観的に考えるたちなので、とにかくやってみようと決めた。

小麦に関する情報を集め、周りの農家に聞いてみたりした。埼玉県西部は北関東の小麦文化圏に属し、かつては所沢でも小麦つくりが盛んで、今でもその名残で近隣市内を含めうどんのうまい店が多い。

しかし農園の周辺の農家で、いまでも小麦を作っているところはまったくといっていいほどない。今の代のその親たちが小麦つくり最後の世代で、結局周辺農家からは有用な情報は得ることができなかった。


肥料を播いて種を播けばよっぽどのことがない限り発芽するのは間違いないだろう。このあたりの種まき時期は11月末とものの本に書いてあったので、そこにあわせて畑の準備を済ませ、農園から最も近いJAに小麦の種の在庫を問い合わせた。しかし緑肥用の麦は何種類か扱っているが食用の小麦の種は扱っていないという返事が返ってきた。

ほかの支店で取り扱っているところを探してもらったが、やはり同じように食用の小麦の種は販売していないと、つれない返事だった。


仕方なく農業関係の知り合いに頼んで「農林61号」の種、1kgを送ってもらうことにした。約100平米のスペースに1kgの種を播くと、約30kgの収穫ができるらしい。

畑にごくごく浅い溝を切り、種を均等にばらまきする。播いたあとは溝をまたいで左右の足を使って薄く土をかける。

ここまではいたって簡単である。種まきから2週間後の12月14日には溝のあちこちから、小さな芽が垂直に顔を出し始めた。12月18日にはレクリェーション気分で女性会員に最初の麦踏をしてもらう。軽い運動になって好評だった。

翌年の2月までに2回目、3回目の麦踏を経て、暖かい春になれば霜柱で小麦の根が持ち上げられる心配もなくなり、3月にはいると春の陽光に小麦は目覚しい成長を続ける。

5月の連休前には出穂して麦らしい姿になる。背丈は大人の腹部あたりにまで達し、5月のそよ風に日に日に重くなっていく穂が大きく波を打ってウエーブのように揺らいでいる。

ここまで来ると収獲は目と鼻の先である。

6月にはいると小麦は茶色に変色し始め、収獲のタイミングの見極めが難しい。

そこで前々から近隣の小麦農家をネットで探していたが、隣接する狭山市に目指す小麦農家があることがわかった。


電話でこちらの事情を説明し、6月15日に小麦の刈り取りを見学させてもらうことになった。農園から車を走らせること20分あまりで小麦農家についた。

国道16号線の裏側の水田地帯の一画に小麦畑が広がっていた。30代の若夫婦が大型のコンバインを走らせ、見る見るうちに刈り取りから脱穀まで済ましてしまう。本格的な小麦農家である。

刈り取りのタイミングの見極め方、脱穀後の乾燥の回数と時期、製粉先の情報など事細かに教えてもらい、大助かりである。

小麦農家訪問から約2週間後、穂が地面に向かって折れ曲がるように垂れたときが収獲時期と教わったとおり、6月18日に火曜グループ全員で刈り取りと、脱穀を行った。

梅雨の晴れ間のジリジリ暑い日で、通路にブルーシートを広げ、その上で刈り取った小麦の実を茎から叩き落した。

本来なら脱穀器を使えば30kg程度の量ならばあっという間に済んでしまうのだが、機械の調達がうまくいかなかったため、人の数を頼んだ原始的なやり方で脱穀作業を進めた。木片を穂に打ちつけたり、穂を束にしてそのままブルーシートにたたきつけたり、おもいおもいのやり方で、つまりどちらにしても力任せに実を落とすこと、約1時間あまり。

炎天下で汗を飛び散らせながらの力仕事に会員は根を上げた様子だった。


何もこんな苦労もしなくともスーパーで外国産の安くてうまい小麦粉を買えるだろう。

しかし便利な生活に慣れてしまうとついついものの価値がわからなくなってくる。普段何も考えずに金さえ払えばなんでも手に入る生活を続けていると、ある日とんでもないしっぺ返しを喰らう。これは今回の福島原発事故による電力不足に直面して初めて電気の重要性を実感することが出来たし、かつ原子力発電発に関していかに私たちが無関心、無知であったことを思い知らされた。


大雑把な脱穀作業のため、その後3度ほど不要なゴミなどを取り除き、お盆前後に最後の天日乾燥をして近くの製粉所に小麦を持ち込んだ。最終的に1kgの種から27kgの小麦が収獲でき、それを製粉したら20kg前後の小麦粉が取れたことになる。


このうち5kgはうどんの試し仕打ちと9月10日に予定している収穫祭でのうどん打用に確保して、残りを会員全員に均等に配分をした。

女性会員の何人かはパンを作って食べてみた。中力粉でも十分美味しいパンが出来たらしい。これに少し強力粉を混ぜれば更にうまくパンが出来るようだ。


うどんの講師を予定している方が、この粉で試し打ちをした結果、市販の粉と比べてもなんら遜色ないというお墨付きまでいただいた。

さて、9月10日は参加者全員がうどん打ちを試みることになっている。どんなうどんが打てるかいまから楽しみだ。


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11月30日、「農林61号」の種を1kg播く

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12月14日、発芽

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12月18日、第1回目の麦踏の様子

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同上

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踏まれるほど丈夫に育つ、強い麦

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3月の小麦、もう麦踏はやらなくても良い

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4月の小麦

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連休直後、立派な穂に小麦の実がついた

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色づき始めた小麦、刈り取りのタイミングが難しい

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6月15日、隣接する狭山市の小麦農家を訪問

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穂が地面に頭を垂れたら、収獲を開始する

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6月28日、炎天下での刈り取り

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同上

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ひたすら原始的方法で脱穀をする

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同上

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お盆明けに最後の天日干をして製粉所に持ち込む

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20kgの粉を会員に均等配分する



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