昨年のちょうど今頃、初めての小麦の収獲とその後の処理作業におわれていた。
たいがいの作物は極端に言えば、肥料をすき込んだ土に種を播けばあとは勝手に芽を出し、育ち、そして実をつける。特に緑肥に利用されるイネ科全般はほとんど栽培に手がかからない。
11月末に種まきした「トコトコ農園」の小麦は冬季に2〜3回の麦踏をするくらいで6月の梅雨の頃には、穂が頭をたれるようにびっしり実を結ぶ。畑全体が黄金色になるまで枯れれば、それが収獲のサインになる。
今年も昨年同様、梅雨の晴天を選んで一気に刈り取り取り作業を行った。
ただし、昨年と違うのは大学時代の級友から足踏み脱穀機を譲り受け、刈り取ったそばから脱穀作業をした点だ。
畑に大き目のビニールシートを広げ、その上に脱穀機を置き、いよいよ機械の始動である。大きなドラムが快適なリズムでカラカラと音を立ててまわりだす。踏み板を強く踏むと回転数が上がり、かなりなスピードでまわりだす。
麦の穂を両手でしっかりつかんでいないと、巻き込まれそうになるほどだ。
刈り取り、束ねた小麦の穂がみるみるうずたかく積まれていく。そのスピードに追いつこうと脱穀作業もスピードを上げる。
軽トラの荷台に脱穀し終わった麦わらが満杯になったころ、突然、回転音に変化が起きた。
どうやら木枠に取り付けられたドラムの固定部分に不具合が出たようだ。
昭和初期に作られたと思われる機械は昭和レトロをプンプンさせる相当な年代ものだ。
それがここ何十年も農家の蔵でひっそり余生を送っていたのを、突然眠りからたたき起こされ、しかも唐突に最盛期の昔のように働かされたのだ。人間で言えば体の節々がぎしぎしするのはやむをえないことである。
脱穀作業は中止にして、残りの約半分は小屋の奥に雨でぬれないように仮おきした。
自動車整備の仕事をしていた会員のMさんがその経験を活かしてなんとか修理してくれた。
数日後、再び機械を動かし脱穀作業を再開したが、ややしばらくするとまた調子が悪くなった。どうやらドラムの回転そのものがおかしくなったらしい。
機械を分解して回転をスムーズにするベアリング部分を取り出して見ると、中に入っていた10個あまりのボールがいびつになっていたり、欠けていたり、約半分が使い物にならない。
ベアリングをそっくりそのまま取りかえるがベストだが、昭和初期の製品の純正部品などあろうはずもなく、やむなく懇意にしている自動車整備工場に持ち込み、なんとか修理できないものか、相談に行った。
残ったボールをまた戻し、なんとかだましだまし動かすしかないだろうというのがプロが出した結論だった。
そしてみたび脱穀作業に取り掛かったが、やはり始動直後はなんとかスムーズに動くのだが、少し回転スピードを上げて、いっきにやろうとするとまたもや機械はへそを曲げてしまった。
未処理の分量もそれほどでもないところまできたので、昨年同様、人力で脱穀する覚悟を決めた。せっかく都下、昭島市から軽トラで運んできた機械だが、やはり寿命が来ていたのだろう。
市の文化財保護施設に寄付をして、多くの人にみてもらうのが一番かもしれない。
このようにあきらめかけていたが、Mさん一人はあきらめずに、ベアリングのボール交換にこだわり続け、ホームセンターで台車用の回転車を買ってきて、それを分解してボールを取りだし、総て入れ替えてしまった。
四度目の正直である。すっかり機械は直り、残りの脱穀作業はスムーズにすすんだ。
これで機械は命を吹き返し、また来年の今頃にはカラカラと快調な音を立てて働いてくれるだろう。
さて、脱穀作業の後には実とゴミとを選別する作業が残っている。
大きなゴミやモミがらをふるいで取り除き、竹や藤で編みこんで作られた道具を使い、小さなごみを風で飛ばす作業である。
この作業は適度な風と経験がないとうまく行かない。空中に実を放り上げてるときに、脇にこぼしてしまい、相当ロスしてしまう。
昨年の場合、1kgの種籾から27kgの小麦が取れたが、脱穀と選別作業の中でどれだけロスが出たかわからない。
今年は昨年の倍の2kgの種籾で正確に計量してはいないが勘では60kgぐらいは収獲できた感じである。
実はこの選別作業は木製の唐箕という手動で大きな扇風機を回し、軽いゴミを風で吹き飛ばしてしまう、きわめて原始的だが効率のよい優れた道具がある。
そこで、代替として我が家の扇風機とダンボールを細工して、簡易手作り唐箕を試作してみた。
これが意外に優れもので、重い実はダンボールの中に、軽いゴミと籾殻はダンボールの外へと選別してくれる。
60kgほどの量でも子一時間ほどで作業は完了してしまった。時間もさることながら、選別中でのロスもほとんどなくうまくいったもんだと、自画自賛している。
途中、実の重さに耐えかねてダンボールはふにゃふにゃになってしまったが、来年はその点を改良して木枠を作り、その外側をダンボールのような厚紙で覆ってやればよりスムーズな選別作業が可能だろう。
これから8月のお盆ごろまでに2回ほど天日乾燥をすれば、最終段階の製粉作業を残すのみとなる。製粉はさすがに機械がないと出来ないので、製粉業者にお任せする。
9月15日には製粉した小麦粉でみんなでうどん打ちを楽しむ予定だ。
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