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トコトコ農園通信

2013年8月5日 更新

ニューヨーク食事情


7月3日からちょうど2週間、ニューヨーク郊外のニュージャージ州、ワシントンタウンにある息子の転勤先自宅を訪れ滞在してきた。

2歳にならない双子の孫を13時間のフライトでアメリカに連れて行くこと、そしてアメリカ生活に慣れるまでのヘルプが訪問目的だった。


典型的なアメリカの郊外住宅地内の自宅は通勤ラッシュのない週末は国道17号線を車で飛ばせば、ハドソン川を越えてマンハッタンの中心部には30分とかからない。

週1回、芝生を刈り取るのがルールの前庭と裏庭をあわせると敷地面積は2200平米(約660坪)に建物面積約200平米の住居がたっている。

住居に面した公道は道幅も広く、別荘地のような雰囲気である。1950年代に開発された中古住宅の1ヶ月の賃料は30万円と高めだが、庭を含めた広さと環境を考えればけして30万円は高くはないだろう。近隣で「FOR SALE」の看板広告を目にしたが、住宅価格はグレードの違いもあるが4千万円から5千万円台が相場のようだ。

日本の不動産相場と比較すれば破格の安さにため息がでる。


住宅地を取り巻く自然環境は十二分に人の手が加えられ保護保全されている。

野生のリスや兎が頻繁に庭に現れ、時には鹿も顔を見せる。さらに驚いたのは独立記念日前後からこの地域一帯は夕暮れになると蛍が乱舞する。

日本では自然環境を推し量るバロメーター的な生き物のひとつの蛍がニューヨーク郊外の住宅地一帯に当たり前のように飛び回っている。近くに清流が流れていて、その川辺で大量発生した蛍が住宅地にまで飛んできたのかと思ったが、どうやら日本の蛍とは決定的に違う習性の蛍らしい。

芝生の土の中に卵を産みそして孵化する蛍で、「ファイヤーフライ」と呼ばれ、住民は日本人のように蛍に特別な感情は持っていないほどポピュラーな存在である。


2週間の滞在中、ニューヨーク観光はヤンキース戦観戦とメトロポリタン美術館を訪れただけ。あとは自宅から徒歩3分の大型スーパーに買い物に出かけ、料理作りの手伝い、孫の遊び相手の日々だった。

観光目的ではない今回の旅は現地の暮らしぶり、食事情、物価一般を知るいい機会だった。

自宅から3分とかからないところに大型のスーパーがあって、滞在中5〜6回は買い物に出かけた。

そこで興味をそそられたのが食品主体のスーパーの品揃えと価格だ。

まず、野菜だがナスは大中小の3種類陳列されていたが、大きいものは日本の米ナスを3回りくらい大きくしたものが目に付く。大味かと思ったが意外にそうではなかった。味噌汁、パスタ、油いため料理の具材として食べがいがあった。ピーマンはソフトボール大で肉厚だった。ブロッコリー、キャベツ、ホウレンソウ、マッシュルーム、かぼちゃ、ジャガイモなどは日本のそれと大きな違いはなかった。価格もしかりで日本と比べて高くもなく安くもない。ただ高いと感じたのがニンニクで小さな1房が1個300円には驚いた。

日常的な料理ではあまりニンニクは使われないのだろうか。


イメージとしては農業大国アメリカなら農産物は全体的に安いと思っていたがそうでもなかった。

あと果物類だがリンゴと桃は日本のものに比べ大きさも小さく見栄えもしないし、味もそれほどでもない。日本の果樹農家ならます総て処分してしまうようなC級品が1個300円もする。

TTP問題で日本の農業が壊滅するという意見も多いが、ことリンゴや桃、あるいはイチゴも大きくて外見は立派だが甘さがほとんどないなど、日本の果物類は大半が味と品質、価格においてアメリカを上回っている。おそらくアメリカの果樹農家は日本にかなわないだろう。


一方米だがアメリカ人相手のスーパーでは米は販売されておらず、日本食品などは韓国系スーパーで買い求めなければならない。

ほとんどの食品、食材はそろっているが価格は2倍以上、味噌、醤油、納豆、豆腐、漬物、乾物類などたいがいのものは手に入る。

アメリカで生産される米の品種は9割がインディカ米で日本人が食べるジャポニカ米はカリフォルニア米として5%程度の生産量しかなく、生産者価格も日本の米とほとんど変わらないと聞く。

つまりいくら安い米がアメリカから輸入されるといってもパサパサのインディカ米なら日本人は誰も見向きもしないだろう。


それよりもTTPでもっとも懸念される農業分野はおそらく、肉と乳製品ではないか。

肉はすでにオーストラリア、ニュージーランドとともにアメリカからの輸入は盛んだが、侮れないのがバター、チーズの類でその種類の豊富さ、値段の安さ、そして味もバライティーに富んでいる。この日米の差を埋めるのはなかなか厳しいような感じがした。

例えばチーズがふんだんに入ったパスタ用のクリームソースだが味は濃厚、5人前の量が入って1瓶300円程度だ。これはお買い得と思い土産として3個ほど買って帰った。


牛肉はジューシーで鶏肉は柔らかくておいしい。ハンバーガーやフライドチキンを好むアメリカ人の気持ちがよくわかる。ただ豚肉は脂肪分が極端に少なく、ひき肉でハンバーグ、スライス肉でポークソテーを作ってみたがどれもパサパサでかつ硬くておすすめできない。

やはりポークはハムやソーセージ、ウインナー、ベーコンなどの加工品として食べたほうがうまい。

加工品はそもそも腐敗防止と長期保存を目的として作られたものだからまず塩がかなりきいている。日本人には塩辛いという印象だが、料理の一具材として使うとこれが程よい塩加減になって実にうまい。追加で塩、胡椒を加え味付けする必要がないほどである。


いろいろな調査機関で「世界一物価の高い都市」ランキングが発表されているが、東京は常にトップグループに入っている。しかしきわめて時間的にも地域的にも限定的な今回のNY滞在で感じたことは素直にランキング結果に同意できるものではなかった。


住宅費は確かに桁違いに東京はNYに比べ高い。しかし、食料品などは品質や量、嗜好の違いなどひとくくりに出来ない部分を考慮すると「農業大国」アメリカの印象が強すぎたこともあるかもしれないが、それほど安いとは思えない。


ただひとつだけ物の価値に対する違いという点では気づいたことがある。

不動産の例でみれば1950年代の中古物件が立派に流通していることからわかるように、アメリカ人は新規物件と中古物件の差に日本のように敏感ではない。乗用車の中古車市場も同じで中古車引き取り価格は日本に比べかなり高い。つまり年式や走行距離を形式的に重視する日本に比べ、アメリカは車として十分な利用価値があるかどうかが価格の決め手になる。日本では家や車を膨大に作り、その一方で使えるものでもどんどん廃棄してしまう。壮大な資源の無駄使いをしているような気がする。


今回の旅は観光旅行ではなかなか見えない部分が見えた有意義な14日間だった。


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ヤンキースタジアムのイチロー

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同左

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典型的な郊外住宅の通り

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敷地600坪以上の前庭

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裏庭の広さはちょっとした公園並み

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裏庭からみた隣家

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朝夕顔を見せるリス

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品揃えの豊富な近所の食品系スーパー

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クリームパスタソース



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