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トコトコ農園通信

2014年6月20日 更新

トコトコのテロワール

村上 博

最近、よく見るテレビ番組に「路線バスの旅」というのがあります。それに影響を受けたわけではありませんが、事情があってトコトコ農園への通園の足をこれまでの友人の乗用車同乗から、路線バスに変更しました。最寄り駅からバスで15分くらい、バス停から田舎道を徒歩で7、8分といったところでしょうか。確かに、以前より不便にはなりましたが、その見返りといいますか、これまで気がつかなかった農園を取り巻く自然環境や季節の移ろいに目がいくようになりました。


桜の季節、トコトコの周辺は意外に枝垂れ桜が多いのに気がつきました。広い土地には枝垂れが似合います。桜とともに第二農園から眺めるピンク色に染まる桃の花も見事なものです。花曇りの林の小道でおぼつかない鶯の初鳴きを聞いたのもちょうどこの頃だったように記憶しています。


つかの間の桜の季節が終わると風薫る五月。新緑の森を背景に五月の風に吹かれながらの畑仕事とメンバーが集うパーゴラでのお茶のひと時は何事にも代え難い至福の時間です。初夏の畑はスナップエンドウと絹さやが大豊作。ビールや冷えた白ワインのつまみに最高でした。


梅雨の季節を迎えた、第二農園では麦がすくすくと育ち、白い蕎麦の花が咲き乱れ、ここが所沢の地とはとても信じられません。第一農園では、トマト・キュウリ・茄子・枝豆といった夏野菜の主役たちが順調に育ち、梅雨の晴れ間には畑の畝から畝へと白いチョウチョたちが乱舞しています。有機の畑の象徴とも言えるでしょうが、これからの青虫との闘いも覚悟せねばならないでしょう。


さて表題のテロワール? ワイン好きな方なら、はは〜んと思われる人がいるかもしれませんね。お断りしておきますが、かくいう自分はワイン通とはほど遠い人間ですので、所詮は付け焼き刃の受け売りにすぎません。ご容赦ください。


テロワールとはウイキペディアによるとワイン、お茶、珈琲などの品種における生育地の地理、地勢、気候による特徴をさすフランス語で同じ地域の農地、土壌、気候、地形、農業技術が共通するため作物に特有の性能を与えるとあり、日本語ではカタカナで「テロアール」と表記されています。要はその作物における「生育環境」ということになるでしょうか。実際、ワイン関係者の間では「葡萄の栽培で最も大切なのはテロアールなんだよ!」みたいな感じで使われています。

さらに言えば、テロワールとは人間、土地、気候、生育作物という四つの要素が複雑に絡み合って成立しているとされています。

ですから、これをトコトコに当てはめれば、何年か前までは名前も顔も知らなかった人たち同士が、トコトコの地に集い、野菜作りを楽しみ、季節を語らい畑仕事と収穫をともにこなして、畑の恵みを享受する。こうした出会いとか、協働の畑仕事のやり方など、すべてがトコトコのテロワールと言ってよいかと思います。


自分とテロワールという言葉の出会いは10年近く前に『イタリアワイン最強ガイド』という本を手にしたことに始まります。日本のレストランのワインは高すぎるとして発売当初は業界で物議を醸し出した内容で、つい最近第5刷りが出たばかりのロングセラーです。

ワイン好きでない人にも一読をお勧めします。闘うワイン商と呼ばれる、元ラガーマンの著者の人間味あふれる素顔が随所に読み取れる良書です。


単純に有機の野菜ならいいとか、バイオの食べ物なら安心といった時代のトレンドに同調するだけではなく、この所沢の地の自然環境と風土、そこに集う人たちが織りなすハーモニー。そこからトコトコ農園のテロワールが生まれ、美味しい食が育まれるのではないでしょうか。第二農園の自主耕作チャレンジ(実験農場)からも新しい芽が出てきそうですね。


『最強ガイド』の著者も言っています。「ワインの最終的品質を決めるのは醸造家でもメーカーのトップでもワイナリーのオーナーでもない。日々、畑の土に接しながら葡萄畑で働く人間なのです」

さあ、トコトコのテロワールで育った最上の野菜をどう料理してどんなワインと合わせましょうか。いや、とリあえずビールにしますか!


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バス沿線には枝垂れ桜が目立ちます

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広い庭のある地元のお宅

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第二農園近くの農家の庭先には桃の花が見事です

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風薫る五月

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農園への道

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蕎麦も白い花をつけて

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麦もすくすくと成長

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パーゴラでの休憩と語らいは至福の時間です



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「トコトコ農園」は安全でおいしい野菜作りを楽しむことを目標にしています。
ご興味、ご関心をお持ちの方は、何なりとお気軽にお問い合わせください。
メール:support@ganbare-nougyoujin.org