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トコトコ農園通信

2014年9月20日 更新

古武術を参考にした「疲れず」「元気になる」農作業 〜鍬で土を耕す〜

理事 栗原 繁生

トコトコ農園は、最近になって若い方の会員が増えましたが、従来からの中高年の方も多くいらっしゃいます。どなたも、畑に来るたびに農作業で疲れがたまり体調を崩してしまったら、せっかくの美味しいお野菜も価値が半減してしまいます。


農作業をしてもさほど「疲れず」、むしろ「元気になり」、さらに美味しい野菜が食べられる。そんな一石二鳥にも三鳥にもなる農作業のやり方というのはあるのでしょうか。もし、そんなやり方があれば、農作業に興味を持つ人たちがさらに増え、中高年の方も積極的に農作業を楽しむことができるはずです。


実は、私が稽古を重ねている日本の古武術の「型(かた)」の中に、その答えがあります。「型」が求める身体操作の中に、「疲れず」「元気になる」コツ(秘訣)が含まれているからです。


今回は、トコトコ農園の作業で日頃私が実践している「疲れず」「元気になる」古武術的な動きを、一部紹介いたします。農作業を長く楽しみたいと思われている方の少しでもご参考になれば幸いです。


さて、農作業で一番疲れるものといえば、「鍬で土を耕す」作業ではないでしょうか。トコトコ農園の場合、備中鍬で耕さなければならないほど地面が固かったり、雑草が生い茂る耕地はありません。耕耘するにしてもほとんどが平鍬ですが、最近はトラクターを重用しているため随分と減りました。しかし依然として、いくつかの場面で平鍬で耕すことがあります。そんな時、疲れて長続きできない会員の方を見かけます。


鍬の使い方に慣れてない方は、鍬の柄の端の方を両手で強く握り、肩の高さにかつぎ上げ、叩きつけるように地面に振り下ろしています。この方法では腕や背中・腰に負担が大きくかかり体を壊しかねません。しかも、労力の割に深く耕すことができません。また若い方の中には、腰を振って鍬を体の右側面から背中に廻し、右肩上から大きく振り下ろす人がいます。確かにスピードと迫力はありますが、鍬先を振り回すため、何人かと作業する場合には注意が必要です。また土くれを振り撒くため、周りの迷惑にもなります。


私は杖や槍などの長得物(武器)を扱う際の操法を参考に、土を耕す場合は次のように鍬を操作しています。


「基本姿勢」

1)まず、右足は前、左足を後に置き、背筋を伸ばして鍬を体の正面、腰の高さに構えます。

2)左手は鍬の柄の端に置き、右手は2こぶし離して、軽く握ります。(写真1)


「振り上げる時」

3)右手を支点に左手を軽く下に押し出します。すると鍬先がひょいっと上がります。(写真2)

4)同時に右手を鍬先に向かって滑らせて柄を垂直に立たせます。(写真3)

5)右手が柄の半分を過ぎたら両手をそのままにして振りかぶります。(写真4)

この時、振り上げる左手の高さで振り下ろす強さを調整します。


「振り下ろす時」

6)左手を元の腰の位置まで下ろすと同時に右手を滑らせて左手と合わさるようにします。

鍬先を前方に放り投げる感じです(実際には放り投げませんが)。(写真5)

7)左手は振り下ろしながら、小指、薬指、中指と手の内を絞めていきます。

8)地面に打ち落とす瞬間、姿勢を保ったまま少し腰を落とします。(写真6)

「掘り起こす時」

9)鍬の先端を支点に柄を引き上げて土を崩します。


この一連の動作のポイントは「右手を滑らせる」ことです。そのためには右手は強く握りません。落ちない程度にごく軽く握るだけです。そして基本的に両手とも曲げません。「始終、両手は軽く伸ばしたまま」です。


試されるとわかりますが、驚くほど簡単に鍬を操作でき、さほど力を必要としません。鍬自体がもつ重さに、腕の動きで加速度をつけて仕事をさせているからです。写真4のように頭上に振りかぶらなくても、胸の高さだけで十分に土を耕すことができます。ひと振りで耕せる土の量が増えるわけですから、作業時間の短縮にもなります。鍬を振り上げる回数が減り、しかも今までほど力が要らないので、効率的に「疲れず」に作業を続けることができます。


一方、「元気になる」ためにはどうすればよいでしょうか。私は古武術の稽古で常に注意している「姿勢」「呼吸」「丹田」を意識して作業しています


「姿勢」

背筋を伸ばして顎を軽く引きます。頭のてっぺんの髪の毛を空から引っ張られているイメージです。鍬を操作するあいだ、その姿勢を崩さないように意識します。姿勢が悪いと、体勢が崩れ、余分な力がかかり、呼吸は乱れ、気(エネルギー)が滞ります。

「呼吸」

腹を膨らませながら鼻から息を吸い込み、腹を凹ませながら息を口から吐き出す「腹式呼吸」を行います。鍬の操作では、「基本姿勢」で息を吸いこみ、「振り上げる時」〜「振り下ろす時」は息を吐き出します。つまり、力を出したい時は息を止めるのでなく息を吐き出します。難しければ、おしゃべりしながら鍬を操作すればよいでしょう。

「丹田」

へその下三寸(約9センチ)にある「気(エネルギー)」が集まるとされているところです。腹式呼吸をしながらこの丹田に「気(エネルギー)」を集めるように意識します。実際には鼻から空気を吸うのですが、足の裏から大地の気(エネルギー)を、頭のてっぺんから太陽の気(エネルギー)を丹田に吸い込むイメージを持ちます。そして息を吐くとき、丹田に集まった気(エネルギー)が光となって体の隅々まで広がる様子をイメージをします。


鍬を扱う動作とあわせてこの「姿勢」「呼吸」「丹田」を意識すると、作業が終わった後に体の内側から火照ってくる様子がわかります。運動して汗をかいて暑くなるのとは全く異なり、エネルギーがチャージされ気力が充実してくる感じです。作業をした後の方が体の中から「元気になる」のです。


またこの「姿勢」「呼吸」「丹田」は、トマトの誘引作業やホウレン草の種蒔き作業の際にも、意識することが可能です。私はトコトコ農園に着くとまず姿勢を正し、腹式呼吸で深呼吸をし、大地と太陽の気(エネルギー)を丹田に充足させるようにしています。有機無農薬な土壌と、空をさえぎるものがないトコトコ農園ならではの恩恵です。


農作業には、鍬以外にも道具を使った作業が多くあります。また中腰や前屈みといったつらい作業もあります。古武術の「型」の動きを参考に少し工夫することで、今までほど「疲れず」、気力が充実して「元気になる」農作業を楽しむことができます。また機会があれば、紹介していきたいと思います。(了)


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写真1 両手は2こぶし離して軽く握ります

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写真2 右手を支点に左手を軽く下に押し出します

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写真3 右手を鍬先に滑らせて立たせます

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写真4 右手が柄の半分を過ぎたら振りかぶります

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写真5 右手を滑らせて前方に放り投げる感じで振り下ろします

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写真6 打ち落とす瞬間、姿勢を崩さずに腰を落とします



>> トコトコ農園 <<
「トコトコ農園」は安全でおいしい野菜作りを楽しむことを目標にしています。
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メール:support@ganbare-nougyoujin.org