• 「概要」へ
  • 「イベント」へ
  • 「申込フォーム」へ
  • 「連載」へ
  • 「情報コーナー」へ
  • 「メルマガ登録」へ
  • 「アーカイブス」へ
  • 「リンク」へ

トコトコ農園通信

2014年12月20日

「ぱぴぷぺパプリカ」顛末記

理事 栗原 繁生

「第1は438個、第2は469個、第3は396個」

「ということは、今日一日で1303個!」

地面にうず高く積まれた緑色のパプリカを見て、早朝から第2農園に集まって作業をしていた「ぱぴぷぺパプリカ」のメンバーは声をあげました。前の週に初霜が降りてこのまま残しておいても傷んでしまうだけだったので、この日は思い切って残っているパプリカを全部収穫することにしたのです。着色する前の緑色のパプリカですが、肉厚で大きくて味と中身はパプリカそのもの。十分美味しくいただけます。

「自転車のカゴに積みきれない。どうやって第1農園に持って帰ろうか・・・」


赤や黄と色鮮やかなパプリカはビタミンやカリウムなどが豊富で、ピーマンと比べてもビタミンCは約2倍、カロテンは約7倍もあります。これほど優れた野菜なのに、なぜかトコトコ農園では開設以来パプリカの栽培を行ってきませんでした。栽培が難しいのか、土壌が合っていないのか、費用対効果が悪いのか、何か理由があるはずです。そこで、実際にパプリカを栽培し、本採用に向けて知見やノウハウを取得しようと考えたことが、実験農場「ぱぴぷぺパプリカ」を始めた理由でした。今回は土曜日グループの20代〜40代の若手(?)に声がけをしてメンバーを9組集めました。夫婦や家族で参加するメンバーもいますから実際は12〜3名になります。毎週の作業はトコトコ農園作業前の朝7時半から8時半までとし、収穫は当日の作業参加者で均等配分することにしました。


まずは畑の準備です。4月中旬に第2農園に日当りと水はけがよい3畝分の場所を確保し、苦土石灰と堆肥を施しよく耕しておきました。その翌週には発酵鶏糞を加えて耕したあと黒マルチを張り、植栽まで地温を高めておきました。


次に苗の手配です。最初、播種からの栽培を検討しましたが、毎日の水遣りだけでなく高温環境を維持する必要があるため断念しました。今回は苗からの栽培とし、近所の農家に相談して特別に76苗作っていただきました。


植栽は5月連休明けに行いました。株間を70cmとって黒マルチに穴を穿ち、各畝25〜26苗を植え付け、植え穴から10cm離れた位置に支柱を立て紐でゆるく固定しました。畝間は雑草取り用にトラクターが丁度入れるように80p以上あけました。


5月下旬になると1番花がみられるようになりました。パプリカは「先に樹をしっかり作り、その後に実をつけさせること」が栽培のコツと言われています。そこで、まず1番花は摘み取ることにしました。その後、2番花、3番花と次々に花をつけていくので、どこまで摘み取るかが悩みどころでした。そこで、3畝を「摘果」「整枝」「脇芽取り」などの手間の掛け具合で、「放任」「準放任」「統制」の3つに分類し、生育状況や収穫量を比較してみることにしました。


また、コンパニオンプランツとしてキンレイカ(ナスタチウム)を株間に植えることにしました。コンパニオンプランツは 一緒に栽培すると互いの成長によい影響を与える植物の組み合わせです。キンレイカはテントウムシを呼び寄せアブラムシを退治すると言われていますので、畝の半分で育ててみてその効果を観察することにしました。


梅雨時の6月下旬になるとピンポン大の緑果が数多くみられるようになり、7月に入るとそれがこぶし大に成長しました。しかし、支柱への誘引が甘かったことが原因で、重さに耐えきれなかった枝が何本か折れてしまいました。まさにパプリカ栽培は手が抜けないと痛感した瞬間でした。支柱立てと誘引を丁寧にしておかないと、強い雨風ですぐに枝が折れてしまいます。当初は支柱はひと苗あたり3本を目安としましたが、最終的には4〜5本になってしまいました。


真夏日が続く7月下旬になるとパプリカが赤や黄に色付きました。いよいよ待ちかねた最初の収穫です。店頭で売られているものよりも肉厚で大きく色鮮やかなパプリカを、メンバーは両手いっぱいに収穫しました。この日の収穫量は80個。若干でしたが「放任」の第1畝から多く収穫できました。


その後、11月末の撤収まで収穫と誘引作業を毎週行いました。追肥は発酵鶏糞を4週間に1度施しました。毎回の収穫量は、果の一部が虫食いや日焼けになって摘果したもの(もちろん食べられます)も含め、数十個から多い時で百個を超えました。


なお、夏場には果汁を吸うカメムシが大量に発生しました。木酢液等の塗布対策も考えましたが、カメムシを隣の実験農場へ逃がすだけなのでこの対策はあきらめ、発見即捕殺そして卵駆除を徹底して行いました。なお、キンレイカの近くではカメムシは少なかったような気がしましたが、全くいなかったわけではありませんでした。アブラムシの発生は確認できませんでした。


こうして、初霜が降りる前までに摘果または収穫したパプリカは1022個にもなりました。初霜が降りた翌週に収穫した1303個を加えると全部で2325個になり、ひと苗あたり31個の収穫量となりました。さすがにピーマンやなすには程遠いですが、収穫量としては十分でした。実験的に行った「放任」「準放任」「統制」の3畝については、結果的には収穫量にあまり差がつきませんでした。初めてということもあり、思い切った摘果や整枝ができなかったことが理由ではないかと思われます。


さて、パプリカ栽培のトコトコ農園への本採用については、病害虫の被害が少なかったことや収穫量の多さから十分に条件が整っているように思えます。一方で、支柱立てと誘引作業は毎週丁寧に行わなくてはならず、作物が多く作業が集中する夏場に、毎回誘引作業時間を確保できるかが採用の判断基準となるように思われます。とはいえ、国産有機無農薬パプリカの市場販売価格を目の当たりにすると、その費用対効果は絶大で、会員の喜ぶ顔が目に浮かびます。


「こんなに肉厚で甘くて美味しいパプリカは初めてでした」

打上げ会の席上で、メンバーの一人が笑み浮かべて言いました。

「ほんと、一生分のパプリカを食べましたよ」

別のメンバーも満足げに言いました。

「でも、もし来年もやるとしたら、2畝で充分だと思います」

メンバーの全員がうなづいたので、私は思わず笑ってしまいました。(了)


クリックすると拡大されます。

記事関連の写真

植栽作業

記事関連の写真

1番花

記事関連の写真

支柱立て

記事関連の写真

最初の収穫

記事関連の写真

キンレイカ

記事関連の写真

誘引作業

記事関連の写真

最後の収穫



>> トコトコ農園 <<
「トコトコ農園」は安全でおいしい野菜作りを楽しむことを目標にしています。
ご興味、ご関心をお持ちの方は、何なりとお気軽にお問い合わせください。
メール:support@ganbare-nougyoujin.org