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トコトコ農園通信

2015年10月20日

トコトコのルーツ

村上 博

先日、所用があって東久留米に出かけたついでに自分の農業体験の原点でもあり、共同作業、共同収穫といった体験型市民農園の運営をはじめ、トコトコ農園開園へのお手本となり、大きなきっかけともなった滝山農業塾を訪問してきました。


滝山農業塾は西武池袋線の東久留米駅と同じく新宿線の花小金井駅のほぼ中間地点、滝山団地の入り口近くにあります。戸建て住宅とマンションの間にぽっかりと空いた空間、約2反、600坪の農地に地元で代々続いてきた農家のご主人、榎本塾長が中心となって2004年に開園しました。


開園前後は市の広報誌を通して会員を募集。当初は当人よりもこの広報誌を見た奥さん方から退職後のご主人の健康と趣味をかねた、地域の仲間作りにぴったりではないかという、アドバイスから入会したサラリーマンも多かったとか。いわば、奥さまたちの濡れ落ち葉対策にも貢献したというわけですね(笑)


塾の作業活動は毎週、水曜日と土曜日。夏野菜の最盛期などにはこれに収穫だけの収穫日があります。トコトコと同じく、水曜は退職組、土曜は現役組という感じですが、それほど厳然とした区別はなく、水曜に都合のつかなかった時は土曜に同様に土曜がダメなら水曜にと、かなりアバウトなローテーションです。

栽培する野菜の種類やその苗や種、農作業用の資材などは基本的に塾長が選択、手配してほうれん草や小松菜、キャベツなどの葉物類、大根、人参、里芋などの根菜類、ナス、ピーマン、キュウリ、トマト、トウモロコシ、白菜、ブロッコリーといった季節野菜ものを含め年間で約30種類前後の野菜を栽培しています。


実際の野菜作りは榎本塾長が指導してくれます。指導は文字通りのOJT方式。その時点、その時点でやって見せて、やらせてみて、文句をつける(笑)、教科書的なイロハ、段階的な指導レシピみたいなものはありませんが、そこは代々続く農家の経験と知識、疲れない鍬の振り方から後先を考えたトンネルの張り方等々、今ではすっかり忘れかけていますが理にかなったものがあります。


特筆すべきは、開園当初から畑の近くにある小学校の食育教育にボランティアで協力してきたことです。農業塾の畑には生徒用の畝を作っています。毎年、収穫期には大勢の小学生が父兄と共に訪れ、自分の背丈ほどに育ったトウモロコシ畑を探検したり、大根の引き抜きに奮闘する姿は地域の名物になっています。また、時には会員の有志が学校に招かれ、野菜のにわか先生として講義することもありました。


また、これはトコトコでもすっかり定着し、会員のお楽しみの一つになってきた収穫祭同様、農業塾もほぼ四季の折々に芋煮会、ジャガイモパーティ、ささげ会など、塾の畑や地元で収穫された食材を使った食事会を開催。会員とその家族だけでなく噂を聞きつけて参加する友人、知人などゲストたちも受け入れ、毎回たいそうな賑わいです。

榎本家の農作業用の広い軒下や、柿や柚子、蜜柑などが無造作に植えられた庭でいただく季節ごとの手料理は日本の農家の原風景はかくありやと思わせる風情で、高級レストランの料理をも凌ぐものだと感じるのはわたくしだけではないはずです。


そんな農業塾の活動も十年以上の年月が経つと色々な環境に変化が起きてきます。その一番大きな変化は相続に関連して塾の畑が大幅に小さくなったことです。かつての600坪の畑には17戸の建売住宅が建てられ、畑の面積は150坪に激減しました。

その代わり、この畑から自転車で10分ほどの場所にある300坪ほどの休耕地を榎本塾長と塾生の努力によって立派な農地へと変身させ、トコトコでいえば第2農園が、新たに誕生しています。今回の見学時にも元気良く葉を広げた里芋をはじめキャベツ、ブロッコリー、大根、赤カブ、ほうれん草などが見事とも言える出来栄えで育っていました。


また、滝山農業塾ではトコトコのように常時、会員募集をしていない関係もあって、会員の高齢化が進み現在の会員数は20名前後と最盛期の30有余名からは減少に転じています。トコトコとは組織、地域環境等々、大きな違いがありますので一概に論じられるものではありませんが、体験型市民農園のあり方の一つの参考になろうかとは思います。


一通り、見学を終えた後、榎本塾長の案内してくれた今時珍しい田舎のよろず食堂風の定食屋さんで昼飯を食べましたが、メニューを見てびっくり、麺類から洋食系、和食系まで7、80種類がびっしり。味よし、値段さらに良しでお勧めです。道理で店内は千客万来の満員。納得です。

御食事処 三喜食堂 東久留米市下里


そこで出た体験農園にまつわる話をちょっと。

「仕分け、分配に神経質な人は長続きしないね」「区や市でやっている市民農園体験者に多いんだけど、生半可な知識や自分のやり方に固執する人も向いてないね」「今日はどうしても、もう一本キュウリが欲しいんだけどと思ったらもらえばいいんだよ。あげればいいわけ。それが塾と会員を長く続けられる秘訣だね。大らかにいきましょう」

年々、会員が増え続けるトコトコではそうそうノー天気なことは言ってられない状況ですが、長年の農家体験と農園運営の経験者の言葉だけに、まずはありがたく受け止めておくことにしましょう。


最後に読書の秋にふさわしい? 滝山団地と西武沿線に関連した長編読み物を推薦しておきます。原武史著『レッドアローとスターハウス』(新潮文庫)です。かなりオタクの著者による社会文化論ですが、西武戦沿線に住む人にとっては一読の価値ありです。


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2反あった畑は建て売り住宅に変身。4分の1の面積になってしまった。

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近所の小学校の食育教育に協力、生徒用の大根の畝。

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滝山農業塾の第2農園近くにはまだ、こんな広い空間がある。

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第2農園で元気に育つ里芋。

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何を食べても正解! よろず食堂風定食屋さん。

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西武線沿線にお住まいの方にはお勧めです〜



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「トコトコ農園」は安全でおいしい野菜作りを楽しむことを目標にしています。
ご興味、ご関心をお持ちの方は、何なりとお気軽にお問い合わせください。
メール:support@ganbare-nougyoujin.org