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トコトコ農園通信

2017年11月20日

『白樺と七竈』

初代理事長 神山 光路


 毎年恒例の47都道府県別魅力度ランキング〈ブランド総合研究所調べ〉で北海道が9年連続第1位に選ばれた。都市別魅力度ランキングでも1位の座を京都市に譲ったが2位から4位までを函館、札幌、小樽が占めた。北海道のブランドイメージの高さの要因は自然の豊かさ、雄大さ、多様さが大きく影響していると思われる。その自然につちかわれた海の幸、山の幸の魅力も北海道のイメージアップにつながっている。観光地として人気の高い富良野、美瑛に訪れると、その田園風景の美しさに目を奪われる。そして農地の形状と農家のたたずまいは欧米のそれを連想させる。日本の原風景とされる中山間地域の雰囲気とは明らかに異なる田園風景が北海道のイメージを形成しているのだろう。

 3年前に札幌に移住した私のような新参者の道産子にとって、北海道のイメージ形成に大きな影響を受けたものといえば「白樺と七竈」のある風景である。

 新千歳空港から札幌行きの車窓から眺める景色は本州のそれとは明らかに異なる。それはきっと白樺のせいと勝手に思っている。白樺から連想するのは高原、別荘、避暑地、テニスコートそして冷涼で澄んだ空気。東日本を代表する軽井沢、那須高原、上高地あたりは、ちょっとリッチで高級感をくすぐる雰囲気を醸し出している。白樺は中部地方以北の高原に育つ代表的な高木だ。平均樹齢50年の比較的短命の木で、独特の白い木肌と細身ですらりとしたフォルムが北欧美人を連想させる。“美人薄命の木”とでも勝手に命名してみた。 

白樺は札幌市内の公園や大きなお屋敷の広い庭によく見かける。道民にとっては白樺のある風景はきわめて日常的である。 札幌駅に到着した列車を降りると南口駅広場から広がる街並みもまた他の地方都市と趣が異なる。碁盤のような整然とした札幌の街区は古都京都に通じるものがあり、雑然とした駅前広場を見なれた者には新鮮さと、人によっては少し人工的すぎる違和感をおぼえるかもしれない。

JR札幌駅を背にしてゆっくりと徒歩で南へ向かうこと10分弱、東西に一直線上に街並みを分断する「大通公園」にぶつかる。「大通公園」はニューヨークのセントラパークにその趣が似ている。高層の建物の谷間に人工的な自然が忽然と現れ、市民の憩い場として、あるいは「雪まつり」や「オータムフェスタ」など、大きなイベントの開催場所として親しまれている。

また小さなイベントは年間を通してほぼ間断なく開かれて、特に初夏は長い冬から解放された札幌市民がここぞとばかり太陽光を浴びながら、野外で昼間から麦酒を飲む。このおおらかな解放感もまた日本人的感覚を超えた違いを感じる。

大通公園からさらに南へと歩を進めると、道内一の繁華街、「すすき野」に出る。名物のラーメン、ジンギスカンの店、居酒屋・ビヤホール・バーなど飲食店が軒を並べるが、新宿ゴールデン街のような猥雑さとは無縁だ。なぜなら整然とした街区に立つ建物一棟

一棟に多様な飲食店がまるまる占めているからだ。

さらに南、「すすき野」の飲食街が途切れたところに「中島公園」がある。公園内には本格的な音楽ホール、ミニ天文台、児童劇場、移築・改装された明治時代のホテル「豊平館」、

北海道立文学館、ボートを浮かべる池など文化的施設が多数配置されている。 公園の周囲には観光客相手のホテルや瀟洒なマンションが立ち並び、札幌駅、大通公園周辺や「すすき野」とはがらりと雰囲気が変わる。「中島公園」の周辺は生活感あふれる住宅街が広がり、札幌で唯一残った市電が市民の足として活躍している。 もちろん、「中島公園」内にも立ち姿が美しい白樺が周囲の緑に絶妙なアクセントをつけている。紅葉の季節には赤や黄色の色彩りの中、白樺の白い木肌のコントラストが一層、紅葉を際立出せている。

札幌の街の景観を際立たしているのは道路の広さも関係している。市内すべての道路ではないが片側3車線の道路も少なくない。そして平日の交通量もさほど多くなく、一般道を60キロ超で走る車が目につく。ついついスピードを出し過ぎて交通違反や事故が多いのも北海道の困った特徴だ。


さて普段は白樺ほど目立つ存在ではないが、秋の七竈の色鮮やかさは白樺の存在を忘れさせるほど見事だ。七竈は日本全国の高山に分布し10メートル前後までしか大きくならない。寒さと過酷な環境でじっくり育つ七竈は木目が詰まり、野球のバットの素材であるタモに性質がよく似ている。また七竈は最高級の備長炭のウバメガシに比肩する良質な炭の素材である。七竈の生木は水分を多く含み燃えにくく、その水分を七日かけてじっくり炭焼き窯で飛ばし、炭に仕上げる。七竈の名の由来だそうだ。

 実は札幌に移住して半年を過ぎたころ、紅葉がきれいな街路樹があちこちで目立ち始め、これが七竈だったと、後に気づいた次第である。自己弁護がましいが東京生まれ、東京育ちで山好きでない私が七竈を容易に見分けることは難しい。けれど紅葉と赤い実をつけた七竈に気づいたときの感覚は目にする機会のなかった木がポピュラーな街路樹になっていることに新鮮な驚きを感じたものだ。紅葉が風で飛ばされても七竈の赤い小さな実はその渋さで鳥に敬遠され、冬まで残り、雪の白さとのコントラストが目を引く。

こうして白樺と七竈を市街地で目にすると遠い北の地に移住した事実を改めて再認識させられる。これから翌年の4月まで続く長い冬もまた北海道を特色づける要素の一つだ。札幌市は年間降雪量が5メートルを超える豪雪地帯だが、本州の日本海側の湿った重い雪ではなく、サラサラのパウダースノーだ。雪の日でも道民はほとんど傘をささない。建物の中に入る前に埃を手で払うようにすれば、なんら問題はない。この良質な雪を求めて外国からスキーヤーが毎年、大挙してやってくる。羊蹄山の麓のニセコは札幌から車で2時間弱の交通至便なスキーの町だ。定住する外国人も多く、シーズンオフでも街中で彼らを見かける。

小規模なアメリカンスクルーもあり、国際性を感じさせる地域である。 北海道の秋は紅葉した七竈を見られる絶好の季節だ。しかも札幌郊外の観光地にわざわざ紅葉見物に出かけるまでもなく、公園を含む札幌市内全域がいわば隠れ紅葉スポットになっている。

秋から冬にかけてのこの時期は北海道の特色を際立たせるシーズンである。「雪まつり」を外せば、ふらっと一人旅もなかなか趣があってお勧めだ。



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立ち姿の美しい白樺林

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自宅近くの「中央図書館」の一コマ。バックの山は「藻岩山」

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ニセコ近くの神仙沼、雪と風でねじれた白樺

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「中島公園」内の白樺

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紅葉の中にたたずむ「中島公園」の白樺

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「大通公園」の紅葉

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冬まで残る「七竈の実」

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「七竈」の紅葉」



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